農工大の樹  その74

  
  
ヤマコウバシ
(クスノキ科クロモジ属の種、学名:Lindera glauca Blume)

 この種は高さ5m、直径10cm前後になる背の低い落葉樹で、本州の関東以西、四国、九州、台湾、朝鮮半島、中国にまで分布しています。武蔵野の雑木林でも比較的よく見かけことができます。冬に、すべての樹木の葉が落ちてしまった雑木林の中で、未練ありげに干からびた葉をいつまでもつけているのですぐにわかります。この葉は楕円形で鋸歯が無く、縁が波打ち、やや厚くて強靱です。かめばショウブのような香気があって粘ります。この種は雌雄異株で、雌株は10月には球形の黒い実をつけます。また、冬芽は赤褐色という特徴があります。材質は柔らかく白色ですが、用材として利用することはありません。山陰地方の山村では、この種の葉を粉末にして大麦や小麦の炒り粉に混ぜて団子を作り、これを「タンバ餅」と称して食べたそうです。この写真は府中キャンパスの正門を入って、学生部棟へ曲がったすぐ右に生育するこの種を撮ったものです。
 
環境資源共生科学部門 教授 福嶋 司

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