農工大の樹  その73

    
ブナ
(ブナ科ブナ属の種、学名:Fagus crenata Blume,)

 この種は樹高30m(まれに40m)、直径2mにもなる日本固有の落葉高木です。その分布は広く、鹿児島県桜島の南にある高隈山を南限とし、九州、四国、本州を経て、北海道渡島半島の黒松内地方にまでに分布しています。日本海側地域では純林を形成しており、白神山地や八甲田などの山地では四季の変化に富む美しい森をつくっています。ブナは材が硬く、腐れ易い性質を持つことから、古くは役に立たない無用な木と見られていました。木偏に無と書いてブナと読ませる当て字がそれをよく表しています。ブナは樹形がケヤキに似ていることから山毛欅、ブナの実の形が三角錐で、蕎麦の実に似ていることから曽婆乃岐とも呼ばれました。また、実に30%もの脂肪分を含み、高い栄養価を持つことから「そばぐり」とも呼ばれて山地に住む人の大事な救荒作物でもありました。古くは薪や炭などの利用がほとんどでしたが、白く堅く重い材であることから、最近では高級家具材、フローリング材、合板材として広範に利用されています。このように、その価値が見直されてきたことから、木偏に貴と書いてブナと呼ぶべきだと言う人もいるほどです。ブナはナメコ栽培のほだ木としてなくてはならない木でもあります。美しく、利用価値の高いブナ林は将来にわたって大切に保護していきたい森林です。
    
環境資源共生科学部門 教授 福嶋 司

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