農工大の樹  その71

 
    
イヌツゲ
(モチノキ科モチノキ属の種、学名:Ilex crenata Thunb.)

 この種は高さ2-3mの低木であることが普通ですが、まれに直径60cm、高さ16mにも達します。本州、四国、九州から朝鮮半島南部、中国南部に広く分布しています。この種の名前はツゲに似て非なるものという意味で、イヌを付けたものです。常緑で2-3cmのほぼ楕円形の葉を付けるこの種は、一見するとツゲに似ています。しかし、ツゲはツゲ科の種で、葉が一対(対生)につき、葉の先が凹入しているのに対して、イヌツゲはモチノキ科で、葉が互生し、縁に低い鋸歯があることで容易に区別できます。この種は雌雄異株です。6-7月に白い花を葉の付け根に付け、雌株は10-11月に6mm内外の黒い果実をつけます。ほとんどのモチノキの仲間が赤い実をつけるのに対して、この種だけはちょっと違っています。材は堅く印材、櫛材にもなりますが、材としての利用よりも刈り込みにも強い性質を利用して盆栽や庭木、生け垣などの利用の方が多いようです。樹皮から「鳥もち」が採れ、かつては、カイコが繭を作るための場所としての「まぶし」にも使ったそうです。
    
環境資源共生科学部門 教授 福嶋 司

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