農工大の樹  その69

  
  
ムラサキシキブ
(クマツヅラ科ムラサキシキブ属、 学名:Callicarpa japonica、Thunb.漢字:紫式部)

 この種は、北海道西南部から本州、四国、九州、琉球に普通にみられ、さらに台湾、中国にまで分布する高さ3m前後の落葉低木です。武蔵野の雑木林に生育する低木として普通に見られるものです。写真のように6月にピンクの小さな花の集まりを葉の付け根に着けます。そして、10月から11月にかけて美しく可憐な丸い紫色の果実を多く着けます。この可憐な姿は詩にも多く詠まれています。葉は薄く細長く、先は尖り、多少ざらつきますが毛はありません。よく似た種にヤブムラサキがありますが、その種が葉全体に密に柔らかい毛をもつことで容易に区別できます。また、園芸店でムラサキシキブとして鉢物で販売されているのは、全体に小型のコムラサキと言われる種です。和名は、この実の美しさを紫式部の名を借りて美化したとも言われますが、ムラサキシキミという別名からの転訛という説もあります。低木であることから、材木としての利用はありませんが、この種の材は木理が細かく、ねばり強いので大工道具のノミの柄や箸などに使われてきました。また、木炭に焼くと良質の堅炭が得られると言うことです。
   
環境資源共生科学部門 教授 福嶋 司

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