農工大の樹  その62

     〈 上:葉の表面 下:葉の裏面 〉
  
イヌブナ
(ブナ科ブナ属の種、学名Fagus japonica Maxim. 別名:クロブナ、漢字:犬山毛欅など)

 この種は樹高25m、胸高直径50cm以上にもなる落葉広葉樹で、本州(岩手県以南)、四国、九州(熊本県まで)の太平洋側に限って分布します。本州では海抜300から1300mにまでに発達しますが、それは同じ属のブナよりも低海抜地です。また、この種はブナのような大規模な純林を作ることがなく、土砂の動く斜面を中心に発達することが多いようです。幹は根元から何本も分かれて立つことが多く、やや黒い樹皮にはイボ状の皮目があります。葉はブナよりも薄くて大きく、写真のように葉脈は10から14対、葉の裏の脈上に白い毛があります。一般に和名に「イヌ」とつくのは、比べるものよりも「質が劣る」、あるいは「偽物」の意味で使われますが、このイヌブナは材質がブナよりも劣ることから名付けられたようです。また、別名のクロブナは樹皮がブナに比べて黒いことによります。この写真は農学部の正門を入って少し歩いた右側(学生部棟の裏側)に植えられた本種ですが、自然分布は、近いところでは高尾山の1号路北斜面に広く見られます。来春、本種の観察を兼ねて高尾山を訪れてはいかがですか。
    
環境資源共生科学部門 教授 福嶋 司
                                                     

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