農工大の樹  その61

  
ニガキ
(ニガキ科ニガキ属の種、学名:Picrasma quassioides (D.Don) Benn、漢字:苦木)

 この種は樹高20m、胸高直径40cmにも達する落葉広葉樹で、北海道、本州、四国、九州、琉球、台湾、朝鮮、中国、ヒマラヤ、インドに広く分布します。ニガキ属はアジアの熱帯から亜熱帯にかけて8種が分布しますが、この種は北限地帯に分布するものです。和名のニガキは材と葉に苦みがあることから付いたもので、学名のPicrasmaもギリシャ語で「苦味」の意味です。黒褐色の樹皮と材は古くから健胃薬・消化剤などとして服用され、殺虫剤、黄色染料としても利用されました。この種の材は緻密で、心材は黄色、辺材は黄白色、削れば光沢があるので器具材としてもよく使われてきました。複葉であることから、一見、同じ科で中国原産のニワウルシ(シンジュ)と似ているようにも見えますが、この種の葉は薄く、毛がないこと、小葉に明瞭な鋸歯があることで容易に区別できます。
    
環境資源共生科学部門 教授 福嶋 司
                                                     

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