農工大の樹  その60

  
アラカシ
(ブナ科コナラ属アカガシ亜属の種、学名:Quercus glauca Thunb.、漢字:粗樫、方言名:カタギ)

 この種は樹高15m、直径50cm以上にもなる常緑高木で、本州の宮城県・石川県以南、四国、九州、南西諸島、台湾、韓国済州島、中国、ヒマラヤに広く分布しています。わが国では関西地方以西に最も一般的なカシで、岩角地では自然林を作り、コナラと混じった二次林も広く見られます。この種の属するカシの仲間はヒマラヤ南部、中国南部、日本、東南アジアにかけて80種が分布し、日本には8種が分布しています。漢字の「樫」は和製で、「堅い」と「木」を組み合わせて作ったものです。また、アラカシという和名は枝葉が堅く、粗大であることに由来すると言われています。この種は、一見、アカガシ、ツクバネガシなどに似ていますが、葉の先端部に粗い鋸歯があることで簡単に区別できます。先年、日本から何千キロも離れた中国貴州省の梵浄山(ファンチンサン)でブナ(テリハブナ)林の中に、この種が生育しているのを見つけてびっくりしました。アラカシの分布の広さを実感し、たいへん感激しました。この種の材は、堅くて丈夫であることから、古来より、その性質を利用して、鎌や鍬の柄などの農機具、天秤棒、炭、薪などに広く利用されてきました。また、この種が常緑であることを生かして、防風、防火のための屋敷林や生け垣としても利用されました。
 
環境資源共生科学部門 教授 福嶋 司
                                                     

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