農工大の樹  その130

ネムノキ
マメ科ネムノキ属の種、学名:Albizzia julibrissin Durazz

 この種は、高さ6から10m、直径20から30cmになる落葉広葉樹で、本州、四国、九州、韓半島、中国にまで広く分布しています。樹皮は灰色で、太い枝の先には長さ1cm前後の36〜58個の小葉がたくさんつきます。この葉は夜になると閉じる「就眠運動」を行う特徴があります。夜になって下向きに葉を閉じている姿が木が眠っているように見えることから、この名が付いたと言われています。花は7月から8月にかけての夏に、長い柄の先に10〜20個が集まって咲きます。雌花の雌しべは白色で糸状ですが、雄花の雄しべは細長い淡い紅色で、下方がぼかしになっていて美しいものです。しかし、この花は短命で、夕方に開いて翌日にはしぼんでしまいます。種は薄いマメの鞘(痩果)の中にあり、鞘全体が風でとばされることで分布域を広げています。この種は乾燥、貧栄養に強く、花の美しさもあって街路樹や公園に観賞用に植えられます。また、場所によってはこの種の根が窒素固定を行う根粒菌と共生することから、肥料木や砂防樹木として使っています。家具、器具などの用材として利用されますが、ユニークなところでは、この材を黒焼きして貼り薬としてリュウマチの治療薬として使ったそうです。

農学研究院自然環境保全学部門 教授 福嶋 司

一覧へ戻る