農工大の樹  その124

トウジュロ シュロ
トウジュロ シュロ
トウジュロ
 (ヤシ科シュロ属の種、学名:Trachycarpus wagnerianus Becc.

 この種はシュロに似た常緑の高木で、高さ3〜5mになる中国南部原産のヤシの仲間です。古く中国から持ち込まれたもので、形がコンパクトであることから庭園によく植えられています。しかし、最近はこの実を鳥が食べて、それが消化されないまま糞と一緒にばらまかれるので、あちこちで野生化しています。この種はシュロ(別名ワジュロ)に似ていますが、葉の柄の長さが短く、葉が小さく革質であることで、80〜100cmの長い葉の柄をもち、葉が洋紙質で、裂片は先端が折れて下垂するシュロとは容易に区別できます。漢字の棕櫚は、それを音読みしてシュロに当てられていますが、本来はトウジュロを指すと言われます。材としての利用はなく、庭園樹としての利用が主ですが、シュロと同様に、人が管理をしない場所でどんどんと増えていることから、管理者の自然に対する「関心のなさ」を指標する種とも言えるでしょう。余談をひとつ。今から20数年前、東宮御所で当時の皇太子殿下(現天皇陛下)にご進講をする機会がありました。その時に殿下が「東宮御所にはシュロとトウジュロはどちらが多いですか?」と御下問されたのにはびっくりしました。懐かしい思い出です。

農学研究院自然環境保全学部門 教授 福嶋 司

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