農工大の樹  その121

マメガキ
カキノキ科、カキノキ属の種、学名:Diospyros lotus Linn.

 この種は樹高10m前後、胸高直径30cmから40cmになる雌雄異株の落葉広葉高木です。ヨーロッパ南部から小アジア、インド、中国、朝鮮半島に広く分布し、日本には中国から渡来したと言われます。この種の未熟果実から柿渋をとり、それを塗布することで水を通さなくなるため、ゴムやビニールのない時代には雨合羽や水を防ぐ渋紙として重宝され、利用されてきました。そのために各地に植えられたようです。また、品質管理のよくなかった昔は、清酒が濁ったときに、この柿渋を少量加えて澄ませたともいわれます。余談ながら、この渋柿の渋みはタンニン物質で、これが人の舌のタンパク質と結合すると舌が脱水された感覚で、渋く感じるとされています。渋抜きはこのタンニン物質を唾液に溶けない物質に変えることで、湯抜き、アルコール脱渋、炭酸ガス脱渋などの方法が使われます。この種の果実は球形で直径2cm程度、はじめは黄色ですが、11月頃になり熟すと写真のように暗紫色になります。霜に当てると渋が抜けるため甘くなり、食べられます。このことからブドウガキとも呼ばれます。関東以西に分布するマメガキ(別名 リュキュウマメガキ)とは、本種が若枝と葉の裏に毛があること、熟した果実の色が暗紫色になることで区別できます。この種の種子は古くは熱冷ましとして利用されました。材は堅く緻密で工作しやすく、心材は黒いものが多くて美しいので、今でも建築材や器具材などに使われています。

農学研究院自然環境保全学部門 教授 福嶋 司

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