農工大の樹  その115

若い樹の葉
成長した樹の葉 (写真の樹)
   
カクレミノ
ウコギ科カクレミノ属の種、学名:Dendropanax trifidus Makino
 この種は樹高3〜10m、直径20cm-30cmになる常緑広葉高木で、関東以西の本州、四国、九州、琉球列島に分布します。九州では常緑広葉樹林の中に普通に生育しますが、関東では野生のものを見ることはほとんどありません。厚い革質の葉は3脈が立ち、若い木では3−5裂しますが、成長すると裂けることなく卵形の葉になります。このような性質は異葉性あるいは二葉性と呼ばれヒイラギでもみられる性質です。若いときには角が立って突っ張るが、年を重ねると丸くなる、人の生き様に例えることもあります。種名は若いときの葉の裂けた形が、それを着ると姿が見えなくなるという「天狗の隠れ蓑」に似ているとして名付けられたと言います。森林の中では生育する個体数が多くないために、用材としての利用は薪炭材程度ですが、樹形の美しさから庭木、特に茶庭には好んで植えられます。また、盆栽にも利用されますし、地方によっては神前へ供え物をこの葉に盛る習慣もあるそうです。
環境資源共生科学部門 教授 福嶋 司
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