農工大の樹  その114

〈上:円錐状の雄花〉〈下:朱色の種子をもつ雌花〉
ソテツ
ソテツ科ソテツ属の種、学名:Cycas revoluta Thunb. 漢字:蘇鉄

  この種は樹高5m、直径30cmほどになる常緑樹で、雌株と雄株が異なる雌雄株の植物です。自然の分布は南九州以南、琉球列島、中国南部ですが、寒さと乾燥に強い性質から関東以西の公園、庭園や神社などに広く植栽されています。円柱状の茎には全体に葉の跡があり、光沢のある羽状の大型の葉が茎の先端に叢生します。茎の先端部には雄株では円錐状の雄花を、雌株は変形した葉の下部に朱色の種子をもつ雌花を着けます。この種子は飢饉の時に水にさらしてデンプンをとり食べたようですが、種子は有毒な物質を含んでいるためよほどの場合の非常食であったようです。このソテツの仲間は今から1億年も前の中生代中期(三畳紀から白亜紀前半)によく栄えたと言われ、恐竜の餌にもなっていた可能性があります。また、この種は花粉ではなく精虫によって受精が行われますが、これは池野誠一郎博士により1896年に発見されたものです。種名のソテツは中国の蘇鉄の音読みです。蘇は「よみがえる」の意味で、この種が枯れかかったときに鉄分を与えるとよみがえると言われることに由来するようですが、実際には効果のほどは定かではないようです。

農学研究院自然環境保全学部門 教授 福嶋 司

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