農工大の樹  その112

   
イヌガヤ
イヌガヤ科イヌガヤ属の種、学名:Cephalotaxus harrngtonia K.Koch
  この種は高さ10m、直径30cmにもなる雌雄異株の常緑針葉高木で、本州岩手県以南から四国、九州、さらに韓国南部、中国南西部にまで分布します。日本南部ではスダジイやアカガシ、ウラジロガシなどの常緑広葉樹林の中に単木的に生育します。また、日本海側多雪地にはこの種の変種である高さ3mほどにしかならないハイイヌガヤが分布しています。この種は写真のように針状の葉をつけ、秋にはヤニ臭い暗紫色の実をつけます。カヤと似ていますが、カヤは先が鋭く尖った光沢のある葉をもち、硬いので握ると痛いのですが、イヌガヤは全体に軟らかいため痛さを感じません。カヤの実は漢方薬として古くから重宝されてきましたがイヌガヤはその効果がありません。このことから役に立たないカヤという意味で「イヌ」がつけられ、イヌガヤと呼ばれるようになったものです。この種の材は碁盤、家具などの器具に利用されましたが、材の供給が多くないのでこの種の特徴的利用はありません。また、粘りがあり折れにくいことから枝を牛の鼻繰りとして利用したそうです。
環境資源共生科学部門 教授 福嶋 司

一覧へ戻る