農工大の樹  その103

   
サンショウ
(ミカン科サンショウ属の種、学名:Zanthoxylum piperitum DC.、別名:ハジカミ)
  この種は高さ1〜3mの雌雄異株の落葉低木で、北海道、本州、四国、九州と韓国南部に分布します。葉は羽状に分かれる複葉で、春には黄色の花弁のない花を咲かせます。この葉の柄(葉柄)の付根に一対の棘をもつことが特徴で、棘が互い違いに付くイヌザンショウと区別できます。葉、樹皮はミカン科であることからフェランドレン、オイゲノールなどの独特な強い香りをもっています。四川料理は「火鍋」に代表されるように「辛くしびれる」のが特徴ですが、中国では「しびれる」を「マー」と言います。私どもの知っている麻婆豆腐「マー」ですが、あの「しびれ」は中国に生育するトウサンショウの果皮を粉にしたものの味で、たいへん強烈な「しびれ作用」があります。日本のサンショウも同様で、「サンショウは小粒でピリリと辛い」とは、サンショウの果皮の辛み成分による「しびれ作用」を表現したものです。新芽が「木の芽」で、吸い物や和え物に利用し、若い果実では佃煮を作り、成熟した果実から種子を除き粉末にしてウナギの蒲焼きにはなくてはならない「粉山椒」を作ります。また、材を「すりこぎ」として利用することも忘れてはならないでしょう。
 
環境資源共生科学部門 教授 福嶋 司

一覧へ戻る