農工大の樹 その28
クヌギ

tree28.jpg (34061 バイト)


クヌギ
(ブナ科コナラ属の種,学名:Quercus acutissima Carr., 漢字:柞,檪)

 この種は高さ15m,直径60cmに達する落葉高木です。わが国での分布は岩手県,山形県以南ですが,中国からヒマラヤにかけての東アジアに広く分布しています。古くから材を薪や炭に利用しました。茶席で使う「菊炭」はこの材を炭に焼いた材の切り口の形を菊の花に見立てたものです。堅果(ドングリ)や殻斗(ドングリの乗ったお椀)からはタンニンを採り,黒茶色の染料としました。また,樹皮が厚いのでシイタケのホダ木として盛んに利用されました。中国ではすでに6世紀頃から栽培されていたようで,前記のほか,葉は柞蚕の飼料に,堅果はブタの飼料としても利用されたそうです。この種は日本でも江戸時代以降,各地で積極的に栽培されました。「武蔵野の雑木材」がその代表です。葉は長楕円状被針形で,クリとアベマキに似ています。クリは葉緑につく針の先まで緑色(クヌギは透明)で,裏に小腺点があること,アベマキは葉の裏に綿毛があることでクヌギと容易に区別できます。ドングリは2年をかけて熟します。小さい頃,それで笛やコマを作りました。クヌギのドングリで作ったコマが一番よくまわったという経験をお持ちのかたも多いのではないでしょうか。

(農学部教授 福嶋 司)


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