農工大の樹 その19
トウネズミモチ

tree19.jpg (33156 バイト)


トウネズミモチ
(モクセイ科イボタノキ属の種,学名:Ligustrum lucidum Ait.)

 この種は,樹高10m程にまでなる中国原産の常緑広葉樹で,明治初期に渡来しました。日本原産のネズミモチとよく似ていますが,それと比べると,全体に大振りで,大型の樹形,葉も花序も大きいのが特徴です。光沢を持つ皮質で厚い葉は卵形−卵状楕円形,花は円錐花序で6〜7月に咲き,果実は球状長楕円形で紫黒色をしています。公園や街路樹,高速道路に広く植栽されていますので,よく見かける樹木でもあります。この種は劣悪な環境に耐えてどこででも旺盛に成長しますので,植える側にとってみれば扱いやすい樹種ではあります。しかし,全国的に氾濫気味であることも事実です。特に,高速道路沿いでは九州から東北まで,どこを走ってもこの種が植えられており,この植栽が特色ある地域景観を単純化していることは否めません。漢方ではこの果実を干したものを「女貞」といい,強壮薬として古くから使われています。肝臓によいとも言われます。日々過酷な生活を強いられている私どもにとって,この女貞で健康の回復を試みる価値はありそうです。

(農学部教授 福嶋 司)


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