農工大の樹 その11
マテバシイ

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マテバシイ
(ブナ科マテバシイ属の種,学名:Pasania edulis Makino 別名:トウジイ,クマジイ,サツマジイ)

 この種はアジアの熱帯から暖温帯までに,50種,北米西部で1種が知られている南方系の常緑広葉樹です。我が国では房総半島,紀伊半島,四国,九州,沖縄に野生状に生えていますが,本州のものは植栽起源のようです。学名のPasaniaはジャワでのこの種の呼び名,edulisは「食べられる」というギリシャ語に由来します。この学名が示すように,長さ2−3cmにもなる大型の種子は食用になりますが,味はシイに比べ数段劣ります。材は農機具,舟の櫓,薪炭材などに利用されてきました。また,刈り込みにも強いので防風,防火の効果を期待して屋敷の周囲にも多く植えられました。近年は,この種がどこででもよく生育すること,革質の厚い葉が集まって丸みを持っ特異な樹冠を形成することなどの性質が重宝され,公園や街路などに多く植えられています。この種は自然の森林では多くの種と共存し,単独で優占することはありませんが,単一植林地では最上層に優占して密な樹冠を形成します。このため林内には他の樹木や草木がほとんど生育しません。競争相手の多い中では節度を保ち,目立たずに生活していたものが,一旦,制約がとれると他との共存を忘れ,自分のことしか考えない。どこか人間の振る舞いに似た生き様を見せる種でもあります。

(農学部教授 福嶋 司)


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