農工大の樹 その10
カツラ

tree10.jpg (32444 バイト)


カツラ
(カツラ科カツラ属の種,学名:Cercidiphyllum japonicum Sieb. et Zucc.)

 この木は,雌雄異株の落葉広葉樹で,老齢化すると壮大な樹形になり,樹高30m以上,直径2mにもなります。この種は,北海道から九州までの山地に広く分布し,トチノキ,サワグルミなどと共に渓谷林を作りますが,純林を作ることはありません。また,近縁種(変種)は中国にも分布しています。和名のカツは香出(かづ)と添え字のラとが一緒になったものと言われ,語源となったように晩秋にこの木の下を歩くと風に乗って,甘い芳香が広がっているのが感じられます。学名はこの種の葉が丸く,浅く心形に窪んだ形であることが,マメ科のハナズオウ属の種に似ていることから付けられたものです。「愛染カツラ」という語がありますが,それは,この木の下で手をつなぎ,木の周りを回りながら願いをかけた二人は必ず結ばれるという言い伝えによるものです。この木は水に強く,材は船材,建築材,器具,楽器など,葉は抹香,樹皮は屋根葺きの材料などに利用されてきました。この写真は,農学部キャンパスの中庭にそびえる個体で,樹齢は100年以上と思われます。

(農学部教授 福嶋 司)


一覧へ戻る