島本直弥: \(SL(n,\mathbb{C})\)の多重旗多様体の対角作用による軌道分解
等質空間\(X=G/H\)の関数空間における既約表現の重複度が有限であることと,\(H\)が実旗多様体に開軌道をもつということとが同値であることが1990年初頭に小林 -
大島によって発見・証明され,このような空間\(X\)は小林によって実球等質空間と名付けられた.
一方,\(H\)が実旗多様体に開軌道をもつという条件は,軌道が有限個であることと同値であることが1990年代までにBrion, Vinberg, Kimelfeld, Bien,
小林らによって証明された.
他方,一般の放物型部分群による一般旗多様体においては,\(H\)が開軌道を持ちながらも,
軌道の個数が有限個ではないことがありうる.
この現象を解明するため,このような現象が起こるもっとも簡単な場合を詳細に調べることが,
この方向における研究の最初のステップとなるであろうと思われる.
そこで,この現象が起こるもっとも簡単な例として,\(SL(3,\mathbb{C})\)の多重射影空間への対角作用に着目し,
連続無限個現れる軌道を複比によってパラメータ付けして一つの塊(系列)として扱うというアイディアで,
軌道分解および閉包関係を組合せ論的に記述することができたので,この講演ではその結果を報告する。