高栁正夫　助教授
最終学歴：東京大学大学院理学系研究科
称　号　：理学博士
専門分野：物理化学（分光学、反応素過程）
電話番号：042(388)7344
ＦＡＸ　：042(388)7344
E-mail　：masaot@cc.tuat.ac.jp


プロフィール

　身の回りにある物質がどのような形の分子でできているか、という興味から物理化学の世界に入り込んだ。はじめは、分光法による分子の形の決定に興味の中心があった。その興味はいまだに持ち続けているが、最近では化学反応の機構（反応が進行する間にいったいどのように結合の組み替えが起こり、どのようにエネルギーが動いて行くのか）にも強い興味を持っている。

　学生の頃、指導をしていただいていた先生の一人に「君はいつも楽しそうに実験をしている」と言われたことがある。正直に言えば、実験にはつらいことも多い。しかし、直接目で見ることはできない分子の形や動きを種々の装置を用いて”見る”ことは魅力的なことである。また、ある分子について知りたい情報をどうやって手に入れようかと実験の計画を練ったり、実験結果の解釈についてああでもないこうでもないと考えることは大好きである。

　現在私が指導している学生の人たちにも、知識や技術を身につけるだけではなく、まず実験や研究の楽しさを知ってもらいたいと思っている。

現在の研究概要

　私たちの身の回りに存在する物質は、気体を除けば必ず分子の集合体の形で存在する。分子集合体の中では、分子はお互いに相互作用をおよぼしあっている。分子間に働く相互作用は、個々の分子に限って見れば小さな力ではあるが、分子集合体全体としてみると大きな力となり、その物質の本質的な性質が分子間相互作用によって決まっている場合すらある。また、逆に分子間相互作用を用いて種々の分子を組み合わせることにより、個々の分子にはない新しい性質を引き出して用いることも可能である。このように分子間相互作用は、基礎応用両面できわめて重要なものであるにもかかわらず、その研究は必ずしも十分に行われているとは言えない。

　本研究室では、分子間相互作用が分子の構造、反応、性質にどのような影響を与えているのかという点について、基礎から応用まで幅広く研究を行っている。基礎的な面では、レーザー分光法を用いて分子線中に生成する分子会合体（二量体から分子数個程度からなる会合体まで）についての研究を行っている。たとえば、（１）会合体自身の構造決定、（２）会合体中の分子と孤立分子（単量体分子）の構造の比較検討、（３）気相で二分子が衝突して起きる反応と会合体中で起きる同じ反応（出発物質が会合体を形成している反応）について反応経路や機構の比較検討などを行っている。

　一方、機能性色素分子の電子状態や分子構造、反応（異性化反応など）が、環境（たとえば結晶形の違い、溶媒の種類、会合体の形成など）にどのように依存するかを、電子吸収スペクトルや赤外・ラマン分光法により調べるという研究も行っている。これらの色素分子は環境からの影響を強く受けることが多いから、その機能（たとえば、増感作用、光電効果、フォトクロミズムなど）を有効に利用しようとするとき、色素分子が環境から受ける影響を詳細に知ることは是非とも必要である。本研究室では、色素分子と周囲の分子との間の相互作用を詳しく調べるとともに、そこで得られた結果をもとに色素分子の機能発現のメカニズムも検討しようとしている。