1-フェニル1-プロピン
さらに、それぞれのイミノキシラジカルにおいて4つずつの構造異性体も考えられます。
詳しくは、J.Phys.Chem.に掲載予定です。
下の図はNO2と1-フェニル1-プロピンをそれぞれアルゴンで希釈してマトリックスにして、580nm(200mmW/cm2)のレーザー光を15時間照射した前後の差スペクトルです。
○で示されたバンドはNOxもしくはCO2であり、×で示されたバンドは出発物質の1-フェニル1-プロピンです。
このスペクトルから、2112cm-1はメチルフェニルケテンのC=C=O伸縮、1872cm-1はNOの伸縮、1715cm-1、1590cm-1はそれぞれイミノキシルラジカルのC=O伸縮、C=N伸縮であると帰属しました。
しかし、生成されるイミノキシラジカルには、アセチルフェニルイミノキシル(A)とベンゾイルメチルイミノキシル(B)の二つが考えられます。
さらに詳しく量子化学計算密度汎関数の結果と比較検討することによって、存在するイミノキシラジカルは上図のAEE型であると結論しました。
分子クラスターの光反応の研究
中田研究室では、マトリックス単離赤外分光法を用いて、分子クラスターに光をあてて反応を誘起して、その生成物の帰属を行っています。
ここでは、希ガス固体中での二酸化窒素とアルキンとの光反応について紹介します。
二酸化窒素は398nm以下の紫外光では酸素原子と一酸化窒素に解離しますが、可視光ではエネルギーが足りないために、解離することはありません。しかし、二酸化窒素がエチレンのようにπ電子を持つ分子とファンデルワールスクラスターを形成していると、赤や黄などの可視光でも反応が誘起されることを見出しました。
この反応は、解離した酸素原子との反応ではなく、励起状態の二酸化窒素との反応であるので、温和な酸化が期待されます。その結果、これまでに知られていない準安定な酸化物を生成することができます。
二酸化窒素と1-フェニル1-プロピンとの光反応について、以下に例を挙げます。
(小島)