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超音速分子線とレーザー分光法を利用して,分子同士が相互作用した状態(会合体)の構造とそのダイナミックスを研究しています。
分子は,一つだけで存在している状態(単量体)と溶液中でのようにたくさんの分子によって囲まれた状態(会合体)とで,その性質を大きく変化させます。これは,周りの分子の影響で分子の構造や電荷分布が変化するためだと考えられます。
身近な例として,大気中での化学反応があります。従来,大気中での化学反応は分子同士の衝突による気相反応として扱われてきました。しかし近年,エアロゾルなどの表面や内部で起こる反応も,大気中で重要な役割を果たしていることが明らかにされてきました。現在の大気化学では,他の分子と相互作用した状態での化学反応を調べることがたいへん重要だと考えられています。
本研究では,主にレーザー誘起蛍光(LIF)励起分光法と共鳴多光子イオン化(REMPI)分光法を用いています。REMPI分光法では,会合した分子の数を決めるために飛行時間型質量分析器(TOF-MS)を併用しています。TOF-MSは,光によってイオン化された試料を電場で加速し,ある一定の距離を飛ばし,検出器に到達するまでの時間の差で質量を分ける装置です(図)。これらのレーザー分光法を用いて単量体と会合体中での分子振動の違いや分子間振動を観測し,それらを解析することによって会合体の構造とダイナミックスを検討しています。
現在は,ハロゲン化フェノールと水の会合体についての研究を行っています。特に,分子内でも水素結合を作ることができるオルト位置換のハロゲン化フェノールについて,水分子と会合したときに分子内と分子間の水素結合がそれぞれどのように形成されてゆくのかを興味深い研究内容だと考えています。
(櫻井)
