1.研究課題

 磁性細菌粒子表面の生体分子アーキテクチャーの構築

2.研究の背景および目的

 磁性細菌は、体内に脂質二重膜で覆われた微小な磁気微粒子を合成し、保持している。また、表面に特異的に発現されるタンパク質の存在が明らかになっている。すでに我々の研究グループでは、磁性細菌粒子の生合成に関与する遺伝子magAを見い出し、そのキャラクタリゼーションならびに解析について行った。磁性細菌において、これらの遺伝子産物はそのシグナル配列の情報に従って、磁気微粒子表面にソーティングされ、さらにその機能ドメインの役割に従って、あるものは磁気微粒子表面の脂質層の内側へ、あるものは外側へとディスプレイされることを明らかにした。また、この磁気微粒子が磁性担体として利用可能であることを示した。

 そこで本研究では、この磁性細菌粒子の表在性タンパク質を生体分子アーキテクチャを構築する上でのリンカー分子として注目し、機能タンパクを融合して酵素や抗体等を粒子表面上で活性のある状態でディスプレイすることを目的としている。すなわち、ディスプレイ法と遺伝子融合法を組み合わせて、遺伝子キャリヤー、ドラッグキャリヤーとなりうる生体分子を磁性細菌粒子表面にディスプレイする技術を開発し、機能性磁性細菌粒子の作製を行う。さらに、遺伝子分子間機能の制御や測定系等への応用への展開を予定している。

3.研究計画

 これまでに得られている知見を利用し、リンカー分子と機能タンパク質を遺伝子レベルで融合し、磁性担体の生体分子アーキテクチャの構築について検討を行う。リンカー分子として磁気微粒子表面に発現することが明らかとなっているMagAタンパク質、Mpsタンパク質を用いる。MagAタンパク質はC末端、N末端ともに外側に配向していることが明らかとなっていることから、MagAタンパク質を用いた2種のタンパク分子を同時ディスプレイする技術を開発する。また、磁気微粒子上での発現量が多いMpsタンパク質を利用して、機能タンパク質を高発現した磁気微粒子を作成する。

 ルシフェラーゼタンパクを分子マーカーとして、ディスプレイされたタンパクの発現の確認を行う。あわせて、固定化が困難とされる疎水性タンパクや小分子タンパクをディスプレイについて検討する。具体的には、以下の項目について実験を進める。

 1.リンカー遺伝子-機能タンパク質遺伝子発現ベクターの構築

 2.上記ベクターのクローニング

 3.形質転換体の培養とディスプレイ分子の磁性細菌内での発現

 4.機能タンパク質−磁性細菌粒子複合体の作製

4.進行状況

 以前より、継続して研究を行っているため、6月末時点での上記研究計画のおよそ20%は達成されている。

5.この研究課題に関連した1996年以降の発表論文リスト

(1) Tsuyoshi Tanaka, Hiromichi Yamasaki, Noriyuki Tsujimura, Noriyuki Nakamura, Tadashi Matsunaga: "Magnetic Control of Bacterial Magnetite-Myosin Conjugate Movement on Actin Cables.", Materials Science and Engineering C, 5,121-124 (1997).

(2) Tadashi Matsunaga: "Genetic Analysis of Magnetic Bacteria.", Materials Science and Engineering C, 4, 287-289 (1997).

(3) Tadashi Matsunaga, Yoko Higashi, Noriyuki Tsujimura: "Drug Delivery by Magnetoliposomes Containing Bacterial Magnetic Particles.", Cellular Eng.,2, 7-11 (1997).

(4) Tadashi Matsunaga, Masashi Kawasaki, Xie Yu, Noriyuki Tsujimura, Noriyuki Nakamura: "Chemiluminescence Enzyme Immunoassay Using Bacterial Magnetic Particles.", Anal. Chem., 68, 3551-3554 (1996).

(5) Tadashi Matsunaga, Noriyuki Tsujimura, Shinji Kamiya: "Enhancement of Magnetic Particle Production by Nitrate and Succinate Fed-batch Culture of Magnetospirillum sp. AMB-1.", Biotechnol. Techniques, 10, 495-500 (1996).

(6) Toshifumi Sakaguchi, Noriyuki Tsujimura, Tadashi Matsunaga: "A Novel Method for Isolation of Magnetic Bacteria without Magnetic Collection Using Magnetotaxis.",

J. Microbiol. Meth., 26, 139-145 (1996).

(7) Tadashi Matsunaga, Haruko Takeyama: "Biomagnetic Nanoparticle Formation and Application.", Supramolecular Science, (1998, in press).

6.新聞記事

 日本経済新聞 1996年10月28日(39kbyte)