地球規模の食料生産とエネルギー問題は人類の最重要課題である

全世界を取り巻く諸問題の中でも、「拡大する人間活動に対する地球の有限性」は深刻性を増す本質的な課題である。食料生産を支える土壌・水・肥料・光・熱・輸送システム等をエネルギー換算すると、化石エネルギーを使用しない自然農法だけでは全世界の必要量を賄うことはできない。人類は、食料の増産のため有史以来様々な技術開発を行い、20世紀初頭のハーバー・ボッシュ法の発明、緑の革命等によって、近年の食料生産力は著しく増大した。しかし、化学肥料や耕作機械のために石油エネルギー資源に大量に依存しており、低炭素化、省資源、環境低負荷等に対する問題を内包している。

世界の総人口は、現在、約70億人であり、1950年(25億人)から2.8倍、1970年(37億人)から1.9倍というように、増加の一途をたどってきた。それを支える食料生産も増加し、世界の穀物生産量は1970年から2倍となった。その間、世界のエネルギー需要は2倍以上の増加を示し、その中には食料生産のエネルギー消費も含まれている。食料生産は地球規模のエネルギー問題そのものであり、食料危機はエネルギー危機と連動した地球規模の課題である。近年、食料生産へ投入されるエネルギー量は数倍になったが、その生産エネルギー量は微増であり、エネルギー的にはマイナスとなっており、人類は過大なエネルギーを消費して人口を養うための食料を生産してきた。また、食料の分配不均等から、飽食によって4億人の肥満者を抱える一方で、8億人を超える人々が栄養不足に直面している。さらに、世界的な気候変動や、土壌・地質条件、水資源の枯渇、野生動物による森林や耕作地被害の激増など環境の変化、福島原子力発電所の事故をはじめとする人間活動の弊害による食の安全性や信頼性の低下など人間生活への影響も年々深刻化し、人類の生存も脅かされる状況にある。食料問題は、地球規模の環境やエネルギー問題と決して切り離して考えることは出来ず、事象を広く俯瞰的に捉えなければならない。

食料生産の大部分を石油エネルギーに依存する世界的危機」から脱却し、非石油依存型食料生産の時代を創出する人材を養成する。

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全世界の食料の大部分は石油エネルギーを利用することによってつくり出され、現在少なくとも、50億人以上が生きるための食料生産は石油に依存している。これは、有限の地球上で高密度化社会が形成され、全人類約70億人のための食料生産は自然農法では到底賄えないことを明確に意味している。すなわち、人類が永続的に地球環境を持続しながら心身共に豊かな生活を送るためには、その生命の源である「食」に関する地球規模での究極的な課題に挑戦し、食の生産性やエネルギー依存形態を変革することが必須である。この第2の緑の革命を実現するためには、農学や工学の基盤技術を深い理解の上に、食料、環境、エネルギーの相互不可分の関係を理解し、人類生存の究極課題に熱意を持って挑戦するリーダーが必要である。関連する国内外の公的機関、産業界の経営者、研究者から、有識者等からこの分野におけるリーダーが備えるべき条件に関する調査を行い、下記のとおり「養成すべき人材像」を掲げるに至った。

  • 高度な実践型研究人材として、食料、環境、エネルギーの相互不可分の関係を理解し、人類生存の究極課題に熱意を持って挑戦できる
  • 複合領域に跨がる広い専門分野の人材を統率してチームを作り、コミュニケーション力をもって国際社会で活躍できる
  • 目標実現に向かって自らの洞察力で見出した課題について、強い意志で挑戦・実行・完遂できる