この種は高さ20m、胸高直径2mにもなる常緑広葉高木で、宮城県、新潟県以西の本州、四国、九州、琉球に分布し、韓国の済州島や台湾にも分布します。谷に面した斜面に生育することが多く、アラカシやシラカシよりも高海抜地に分布します。この種の樹皮は灰色で、葉は細く、長さは10cm程度で半分から先の縁には鋭い鋸歯があります。また、葉の表の中心部の脈(主脈)が凹入し、葉の裏が灰白色になることも特徴です。和名は葉の裏が白いことから来たものです。この種は一見するとシラカシに似ていますが、シラカシは樹皮が黒く、葉の鋸歯がほとんど目立たず、葉の表の脈が凹入しないこと、さらに、葉の裏が緑白色であることで容易に区別できます。府中キャンパスには、この種の他に、シラカシ、イチイガシ、アラカシ、アカガシ、ツクバネガシ、ウバメガシ、シリブカガシなど多くのカシ類が植えられており、日本に分布するカシ類のほとんどを見ることができます。この種の材は堅く、その性質を生かして建築材、機具材として利用されてきましたが、変わったところではこの種の枝を海苔養殖の粗朶として利用するところもあるそうです。
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この「農工大の樹」は平成6年(1994)年11月のケヤキを第1種目として、府中キャンパス、小金井キャンパス、本部地区に生育する樹木を今回までに134種(欠番3回を除く)紹介してきました。その大部分は植栽されたものですが、これほど多くの樹木が植えられていたことは驚きで、キャンパスの環境の多様性を高めた先人の意識の高さを思わずにはおれません。私はこの3月末で定年を迎えます。長い間、この「農工大の樹」の執筆に関して励ましてくださった多くの方々に感謝し、農工大学の「緑の環境」が一層すばらしいものになることを期待しつつ、この号で筆を置きたいと思います。長い間、お読みいただきありがとうございました。(平成24年3月)
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