農工大の樹  その133

チャノキ
ツバキ科ツバキ属の種、学名:Camellia sinensis O.Kuntze 

 この種は常緑で高さ2m前後の低木ですが、条件がよければ10m以上になります。原産地は中国西南部の四川省、雲南省、貴州省などで、温暖で雨の多い地帯といわれています。葉は長楕円形で光沢があり、葉の周辺には鋸歯があります。花は白色で、10月から11月にかけて咲き、花の大きさは直径4〜6cmです。丸い花びらは5枚で、多数の雄しべを持つことでツバキの仲間であることがわかります。ただ、花の付く柄が長いこと、花びらを包む萼(がく)が後までも残ることがツバキとの違いです。チャノキの日本への伝来は古く、弘仁6年(815)に仏僧永忠が嵯峨天皇に献じたという記録があります。その茶は蒸した葉を臼でつぶし、固めて乾燥した団茶(餅茶)と呼ばれるものでした。それを粉末にして湯釜に入れ、沸かして飲む飲み方だったそうです。その後、僧栄西が1101年に茶を粉にする「抹茶」の飲み方を伝え、戦国時代以降、茶道として発展しました。私たちが一般に飲む「煎茶」の飲み方は江戸時代になって中国から伝わったようです。また、お茶の葉を完全に発酵させたものが紅茶、半分発酵させたものがウーロン茶、発酵させないのが緑茶である違いも知っておきたいところです。茶はカフェインが軽く、精神安定や覚醒効果、健胃作用の薬効があり、疲労回復の飲み物として好まれています。生水が飲めない中国などでは重要な飲み物になっています。また、果実、葉、花を果実酒にもするそうです。

農学研究院自然環境保全学部門 教授 福嶋 司
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