農工大の樹  その125

キャラボク
 (イチイ科イチイ属の種、学名:Taxus cuspidate var. nana Rehd.

 この植物は常緑針葉樹のイチイの変種で、雄の木と雌の木の別がある雌雄異株です。母種であるイチイは高木で直立し、高さ20m、直径100cmにもなりますが、この変種は直立せず、樹高1.5m程度以下で幹が這う形で生育します。イチイとの違いは、樹高だけでなく、母種では枝や葉が比較的疎に幹につくのですが、この変種は這った幹に枝と葉が密に着くという特徴があります。この変種は本州の日本海側の多雪地方の亜高山や高山の高海抜地に自然分布し、北限は山形県鳥海山、南限は広島県と鳥取県の境界をなす道後山と言われています。鳥取県の大山に分布し、ダイセンキャラボクの名で呼ばれているこの変種は国の天然記念物に指定されています。この変種は樹形がまとまっていること、高くならないことから庭園に植栽されることが多いようですが、新葉が黄色になる品種もあります。この変種は母種と同様に、植物全体にタキシンというアルカロイドを含んでいるため有毒です。

農学研究院自然環境保全学部門 教授 福嶋 司
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