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◎ 「応用昆虫学セミナー」を開催
 2月22日(月)、府中キャンパス2号館多目的教室において、「応用昆虫学セミナー」を開催しました。
 本セミナーは、本学が九州大学、神戸大学、ホーヘンハイム大学(ドイツ)、チェンマイ大学(タイ)、カセサート大学(タイ)と共同で行っている国際化加速プログラム(IPPAE)の一環としてMarie Joy Schulteホーヘンハイム大学教授が来学し、「We have a dream: Successful pest control in organic farming―The reality」(有機農業における害虫防除―その現実)と題した講演を行いました。本講演は、1月25日に来学したClaus Paul Walter Zebitzホーヘンハイム大学教授による講演、「有機農業における害虫防除-その潜在能力と障害」の続編にあたります。
 前回の講演に引き続き、リンゴの有機栽培における害虫防除についてのトピックでしたが、今回の講演では、さらに具体的に、個別の害虫とその防除法について、実際のデータを示した議論となりました。
 ドイツでは、リンゴの害虫として、Cydia pomonella(欧米では非常に重要な害虫で、日本ではコドリンガと呼ばれていますがまだ日本には侵入していません)、Adoxophyes orana(リンゴコカクモンハマキ)、Dysaphis plantaginea(オバコアブラムシ)、Hoplocampa testudinea(ハバチ科)、Grapholita lobarzewskii(ハマキガ科)などが問題になっています。有機農業では、化学合成農薬が散布できませんが、生きた害虫の天敵を使う生物的防除や一部の生物の成分を用いたBiorational control(生物学的防除)を使用することができ、講演では、昆虫病原微生物であるバキュロウイルスや昆虫病原細菌Bacillus thuringiensisを用いた資材の特性と効果、また、Neemと呼ばれるAzadirachta indica(インドセンダン)やQuarry(ニガキ科)の抽出物を用いた防除や、これら植物成分と昆虫病原微生物を組み合わせた場合の効果等についての説明がありました。Neemは、日本ではまだ殺虫剤として農薬登録されていませんが、諸外国では有機農業に適する資材として認められているところもあり、近年日本でも注目され始めています。
 今回は、卒業論文、修士論文発表会の直後のため、参加人数は15人程度でしたが、学生からも活発に質問があり、インタラクティブな講演になりました。講演後も、応用遺伝生態学研究室において、Schulte教授と学生の研究テーマなどについての交流は続き、さらに有意義な時間を過ごすことができました。
 
< Schulte教授 > < Dysaphis plantagineaによる被害 >
 
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