農工大の樹  その102

   
ヤマブキ
(バラ科ヤマブキ属の種、学名:Kerria japonica DC.、漢字:山吹)
 この種は花の美しさから庭に栽培されていることがおおく、栽培種と思われがちです。しかし、この種はれっきとした自生種で、北海道、本州、四国、九州などの山地と中国に分布しています。この種は1〜2mの落葉低木で、緑色の細い茎を多くもち、茎を切ると中側に白いスポンジ状の髄があることなどに特徴があります。また、ヤマブキは実をつけないと思われがちですが、3mm位の大きさの実を結びます。この種の中には中国に分布する八重咲きのヤエヤマブキ、細くて多くの花弁をもつキクヤマブキ、花弁の白いシロバナヤマブキなどの品種があります。太田道灌が狩の途中で雨に降られ、蓑を借りに立ち寄った家で少女が「・・・みの一つだになきぞ悲しき」と伝えたという故事はあまりにも有名ですが、これは実がならない中国渡来のヤエヤマブキを指しているものと思われます。その和歌を含む後拾遺和歌集が編纂されたのが1086年であることから、ヤエヤマブキが900年以上前に中国から渡来し、植えられていたことがわかります。
環境資源共生科学部門 教授 福嶋 司
 ※ 「農工大の樹」の全シリーズは、こちらから

483号目次へ戻る