農工大の樹  その96

   
ムクノキ
(ニレ科ムクノキ属の種、学名:Aphananthe aspera Planch.)
  この種は高さ15〜20m(時に30m)、直径50〜60cm(時に1.5m)になる落葉広葉高木です。この種は、本州の関東以西の本州、四国、九州、沖縄、朝鮮半島、中国、インドネシアまでに広く分布しますが、沿海地域の低地に多い傾向があります。この木の樹皮は淡灰褐色で網目模様があります。また、葉は卵形から狭い卵形で、周囲に鋭い鋸歯があり、両面がざらつきます。果実は秋に黒紫に熟して食べることができます。その味はレーズンによく似ています。同じ科の植物で間違いやすい種としてエノキがありますが、エノキは樹皮の表面が小さなイボ状でざらつき横縞がはいること、葉の表面に光沢があり鋸歯が葉の上半分にあるのに対して、ムクノキの樹皮には網目状の模様があり、葉は光沢がなくざらつき、先が尖ることなどで容易に区別できます。この種の材は折れにくく、割れにくいので古くから器具材として多用途に利用されてきました。また、葉がざらつくことを利用して、乾燥させて漆器や象牙を磨くのに使われてきました。
環境資源共生科学部門 教授 福嶋 司
 ※ 「農工大の樹」の全シリーズは、こちらから

477号目次へ戻る