農工大の樹  その91

   
ウツギ
(ユキノシタ科ウツギ属の種、学名:Deutzia crenata Sieb. et Zucc. 、別名「ウノハナ」)
 この種は1.5mから2mほどの落葉低木で、北海道、本州、四国、九州に広く分布します。この種はたくさんの幹を叢生し、枝分かれが多いこと、樹皮が剥がれるという特徴があります。さらに、ルーペでみると葉に星状の毛(星状毛)をもつことも特徴の一つです。和名のウツギ(空木:うつぎ)は幹に髄がなく、中心部が中空であることに由来します。唱歌「夏は来ぬ」の中に「ウノハナの匂う垣根に・・・」とある「ウノハナ(卯の花)」はこの種の別名で、この種が旧暦の4月「卯月」に白い花を咲かせることからきています。この種は、花が美しいことから生け垣としても利用されることも多いようです。また、武蔵野の台地では、この木が次々と幹を出して長い間生き続けることから、畑の境界に植える「境木」としても利用しました。いまでも、注意してみると畑にそれをみることができます。この種は低木であるため材としての利用はありませんが、古くは木釘、楊枝の材料として利用されてきました。また、天竜川流域では火葬場で骨を拾うための箸をこの種の幹で作るそうです。
環境資源共生科学部門 教授 福嶋 司
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