農工大の樹  その88

   
アスナロ
(ヒノキ科アスナロ属の種、学名:Thujopsis dolabrata Seib. et Zucc. 、別名: アテ、ヒバ)
 この種は樹高40m, 直径80cmから1mになる常緑針葉高木で、東北地方南部から九州までに広く分布しています。アスナロは「明日はヒノキになろう」の意味と言われます。ちょっと夢のない話ですが・・・、文献によると、古来、この種は「阿須檜」(あすひ)、「当檜」(あてひ)と呼ばれ、葉の厚いヒノキの意味が由来だそうです。この種は同じ科の種であるヒノキやクロベに比べると葉が大きく、葉の先が丸みを帯び、裏には気孔条と言われる広い白い線が明瞭にあることで区別できます。北海道南部の渡島半島から関東地方北部にはヒノキアスナロ(青森ではヒバと呼ばれる)というこの種の変種があります。ヒノキアスナロは種を包む球果に突起がなく、ヒノキに似ることからヒノキアスナロと呼ばれることになったそうです。アスナロはこの変種に比べて、葉が薄く柔らかで、葉の裏の白い気孔条が強いことが特徴です。能登半島ではヒノキアスナロを「アテ」と呼び、輪島塗りの漆器の材料として広く植林されています。材は芳香があり、精油殺菌効果があるために、ヒバで造った家は蚊が入らないと言われます。また、耐湿性にも富み、腐りにくいために風呂としても利用されます。この種の利用範囲は広く、建築材、器具材、庭園樹、生け垣などにも利用されています。
環境資源共生科学部門 教授 福嶋 司
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