農工大の樹  その85

   
ナンテン
(メギ科ナンテン属の種、学名:Nandina domestica Thunb.、漢字:南天、中国語:南天竹)
 この種は高さ2m前後の常緑低木で、庭によく植えられています。鳥が食べて運ぶので自然発生したものもよく見られます。中国、インド、日本に広く分布していますが、わが国での分布が自然のものか、外国から到来したものかについては議論のあるところです。現在の分布は本州の東海地方以西、四国、九州ですが、九州や四国では土壌が浅く、乾燥する石灰岩地帯の森林の中に野生の分布をみることができます。この種は光沢のある羽状の葉をもち、それが茎の先端部に束生状につきます。6月頃には茎の先に白い花を円錐状につけ、11月頃になると5mmくらいの赤い実となります。古くからこの種を庭に植えていたようで、すでに800年前に記された藤原定家の日記「名月記」(1180-1235年)には、この種を庭に植えたという記述があるそうです。平穏な時代が続いた江戸時代には赤い実のほかに、白色の実をつけるシロミナンテン、淡い紫色の実をつけるフジミナンテン、葉が糸状になるキンシナンテンなど多くの品種が作られたようで、その数は100品種以上と言われています。果実にはアルカロイドが含まれているので古くから薬効効果のあることが知られており、この実を乾燥させて咳止め薬、葉は強壮薬として用いています。また、和名のナンテンは「難を転ずる」ということに由来し、お赤飯の上にこの葉を乗せて折り詰めにする風習がありますが、これは単に美しいだけでなく、食あたりの難を転ずるまじないとも考えられます。
環境資源共生科学部門 教授 福嶋 司
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