平成18年度連合農学研究科修了式告辞

 本日、学位記を授与されました課程博士59名、論文博士8名、合計67名の皆さん、おめでとうございます。本日は、連合大学院を構成する大学より、茨城大学学長 菊池龍三郎先生、宇都宮大学学長 菅野長右ェ門先生をはじめ、各構成大学の農学部長、理事のご臨席を頂いております。皆様がこれまでの研鑽と努力の結果、博士の学位を取得されましたことに対し、我々一同、心よりお祝いを申し上げます。また、この日を待ちわびておられたご家族の皆様をはじめとした関係各位のお喜びもひとしおと思います。心よりお祝い申し上げます。新たに博士になられた皆さんには、これまで皆さんを支えてこられたご家族やご指導をいただいた先生方などに対して、改めて感謝の気持ちを思い起こしていただきたいと思います。
 さて、これから皆さんは大学院で身につけた農学に関する高度な専門知識と優れた応用能力を生かして,高度な研究を推進できる研究者及び社会の多様な方面で活躍できる高級技術者として社会で活躍することが期待されます。皆さんは、それに応えるのに必要な知識や実行能力を十分に身に付けられたことと思います。しかしこれからの研究生活ではこれまでと大きく異なることがございます。それは、これから皆さんには指導教員がいるわけではなく、システムとしての教育組織があるわけでもない、ということです。皆さんにはひとり立ちした研究者として自ら道を切り開き、新たな知を創造していくことが求められます。これまでの学習では皆さんは指導教員や先輩などから色々とアドバイスなどを受けてこられたことでしょう。その多くがいわば受身の学習であったといえるかもしれません。それが大学の良いところなのです。しかし、これからは自ら進んで行なう能動的学習が求められます。新たな知の創造にはたゆまぬ能動的学習が必要だと心得て下さい。皆さんは博士論文で扱った課題に関しては間違いなくスペシャリストです。しかし、これからはそのテーマ以外の広い領域へと視野を広げることが求められるでしょう。われわれの専門分野で解決しなければならない多くの問題は、異なる分野との連携が必要です。また、国際的な研究協力関係を前提にした取り組みが必要な問題も少なくありません。これらに対応できるグローバルな視点を持った研究者へと成長していって欲しいと思います。そうすることが皆さんへの社会の期待でもあります。皆さんには相対性理論で有名なアインシュタインの次の言葉を贈りましょう。 
        「学べば学ぶほど何も知らないということがわかるようになる。
           何も知らないと分かるようになるほど学びたくなる。」
 皆さんの科学者・技術者としての感覚は瑞瑞しさに満ちていると思います。予想外の結果や現象に驚き、探究心をそそられる新鮮さに満ちた科学者の目を持っております。実際に身につけた知識とそれをさらに吸収しようという姿勢をあわせて「知識力」と呼びたいと思いますが、皆さんにはいつまでも若々しい探究心を持ち続け、知識力に富んだ研究者・技術者となることを期待したいと思います。
 しかし、社会でよい仕事をするのに、知識力だけでは十分ではありません。複雑な社会の中で活動するには、行動力、協調性、判断力、倫理性、自己研鑽能力、コミュニケーション能力など、多様な資質が求められます。これらは総合して一つの人格を形成するもので、いわば人間力と呼べるようなものでしょう。皆さんは最高学府において最先端の教育を受けたわけですから、社会の期待も大きく、それぞれが進む組織の中で指導的役割を期待されるでしょう。豊かな人間力に富む研究者を目指し、諸々の要素を磨いていってほしいと思います。
 いま我々は、地球温暖化や環境汚染、食料不足、エネルギー不足など、人類の生存そのものを脅かす大問題に直面しております。これらを如何に解決するかは21世紀の科学技術に課された重要課題です。皆さんはこれらグローバルな問題の多くが農学にかかわりのあるものであることにお気付きでしょう。皆さんは自らの専門を通して、これらの問題解決に広い範囲で貢献できますし、課題解決の中核を担える立場にあります。本学のモットーは、
        『地球をまわそう MORE SENSE 農工大』
です。これは教育と研究、およびその成果を社会に還元することにより、循環型社会、持続型社会の構築に寄与し、美しい地球の持続に大きな役割を果そう、という壮大な目的を示したものです。最先端の教育を受け、十分な力を付けて社会に巣立っていく皆さんには、農学というキーとなる専門領域を通して人類の生存を脅かすグローバルな課題の解決に寄与され、持続的な地球環境の回復に大きく貢献されんことを期待したいと思います。皆さんのそのような活躍が連合農学研究科に期待される社会貢献の大きな部分を占めていると思っております。皆さんはそういう意味でも期待の星です。
 最後になりましたが、これまでに修得された学識と技術を存分に活かして活躍されますよう祈念し、また、連合農学研究科のさらなる発展のため、構成大学である茨城大学、宇都宮大学、そして東京農工大学のさらなる発展のため、同窓会活動などを通じて、ご支援くださいますようお願い申し上げまして、ここに告辞といたします。
 
  
                     平成19年3月16日
東京農工大学長 小畑 秀文

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