農工大の樹  その76

〈上の写真:花〉 〈下の写真:実〉
  
ヤツデ
(ウコギ科ヤツデ属の種、Fatsia japonica Decne.et Planch.、名:テングノハウチワ)
 
 この種は高さ3m前後にまでなる常緑低木で、本州の福島県以西、四国、九州、琉球、対馬、済州島に分布します。春の食膳を賑わせる山菜のタラノキ、ウド、樹木のコシアブラ、ハリギリ、ツル植物のキヅタ(ヘデラ)と同じ科の植物です。別名、テングノハウチワと呼ばれるように、天狗が持っているとされる「ハウチワ」を思わせる7-9裂の切れ込んだ大きな葉が特徴です。厚く光沢のあるこの葉は枝先に集まって輪状につきます。また、葉の落ちた跡(葉痕)が著しい半月形であるのも特徴です。花は晩秋に、白い小花が球状に集まって咲きます。花には雄しべと雌しべを持つ両性花と、雄花だけの2つのタイプがあります。賢いことに、両性花には雄性期と雌性期があり、先に雄しべが開くことで同じ花の中での受粉を避けています。そして、4−5月になると黒く熟した球状の果実の集合をみることができます。この種は日陰でもよく生育するので、庭園や公園の日陰地に植栽されています。また、この果実は鳥の餌になり、広く散布されるので、いろんな所で見かける植物でもあります。
 
環境資源共生科学部門 教授 福嶋 司
 ※ 「農工大の樹」の全シリーズは、こちらから

457号目次へ戻る