学長あいさつ

   東京農工大学長
産官学連携戦略本部長
小畑 秀文
 
 本年6月、総合科学技術会議の下に置かれた基本政策専門調査会は、平成18年度から5年間の計画で始まる第3期科学技術基本計画の策定に向けた検討結果を中間的に集約し、「科学技術基本政策策定の基本方針」を取りまとめました。この中で、科学技術の基本施策を具体化する産学官連携の推進における主要検討項目として、@組織的な産学官連携への進化、A社会ニーズに即応した産学官連携ネットワークの形成、B先端的融合領域の産学官連携における世界的な研究、人材育成拠点の形成、C社会ニーズに応える人材育成を図る産学官協力関係の形成、D国立大学法人化・独立行政法人化との連携を加速する制度・運用の改善、などが検討項目に挙げられております。
 また、政府の知的財産戦略本部においても「知的財産推進計画2005」が公表され、3回目の推進計画策定となる今回の取り組みでは,知財戦略のグローバル化への対応と知的財産創造の推進に重点が置かれております。国立大学法人のイノベーション創出における産学官連携と大学の知的活動は、ますます重要な局面を迎えているといえます。
 このような状況下にあって、農学と工学の2つの学問領域を中心に幅広い関連分野をも包含した全国でも類を見ない科学技術系大学である本学は、21世紀を迎えた今、「使命志向型教育研究―美しい地球持続のための全学的努力―(MORE SENSE :Mission Oriented Research and Education giving Synergy in Endeavors toward a Sustainable Earth)」を基本理念とし、持続発展可能な社会の実現に寄与すべく、実績と実力を有する大学としてさまざまな課題の解決に真摯に取り組んでまいりました。
 そして、国立大学の法人化と同時に大学院重点化による「大学院共生科学技術研究部」と「産官学連携・知的財産センター」を設置し、これまで以上に研究重視型の大学として、基本理念に沿った先端的研究の推進を目指しております。このような本学の取り組みは、外部機関から高い評価を受けており、日本経済新聞社による工学系の研究力調査(平成16年2月16日)では、研究成果発信力第一位、産学連携力第五位、研究力の総合順位で第五位となっており、規模の大きな総合大学と比べても、互角以上の実力が認められています。研究成果をシーズとする連携プロジェクトも数多く、それらの活動は、本学の特色のひとつとなっています。
 この度、世界主要大学に伍した産官学連携体制の構築を目的とした文部科学省のスーパー産学官連携本部整備事業において、本学が全国6大学の一つとして選定され、その一角を担うこととなりました。このことは本学にとりまして大変光栄なことであり、そのモデル事業を成功させるべく、使命と責任を担い、産官学連携・知的財産活動の更なる強化に取り組んで参る所存であります。
 本シンポジウムは、本学の「産官学連携戦略本部」設置の取り組みと、大学の使命である「教育」、「学術研究」、「社会貢献」に関する本学の活動を紹介すると共に、産官学連携活動を従来にも増して充実させ、組織的な共同研究の推進、積極的な研究資金の獲得を図っていくために解決すべき課題や今後の方向性を全国の大学、連携を共にしていく官庁・産業界の方々共に考え、意見交換を行う場として企画致しました。
 末尾になりましたが、本シンポジウム開催にあたりまして、ご参加いただきました関係各位の皆様はもとより、ご講演をご快諾いただきました東京大学 石川正俊副学長、京都大学 松重和美副学長をはじめ、文部科学省 伊藤学司技術移転推進室長、経済産業省 中西宏典大学連携推進課長及び開催にあたりご尽力賜りました関係各位の皆様方に心より感謝申し上げ、ご挨拶とさせていただきます。 
    


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