平成16年度大学院連合農学研究科修了式告辞
 平成16年度、東京農工大学大学院、連合農学研究科学位記授与式に当たり、課程修了博士の皆さん、および、論文博士の皆さんに、学位取得を心からお祝い申し上げます。
 本日は、皆さんの学位取得をお祝いすべく、連合大学院を構成する大学より、茨城大学学長菊池(きくち)龍三郎(りゅうざぶろう)先生、宇都宮大学学長田原(たばら)博人(ひろと)先生、また、各構成大学の農学部長、理事・副学長のご臨席を頂いております。
 本日の学位取得者は、課程博士42名、論文博士8名の計50名であります。課程博士のうち、13名は外国人留学生で、中華人民共和国、大韓民国、インドネシア共和国、バングラデシュ人民共和国、ミャンマー連邦、ネパール王国、タイ王国、イランイスラム共和国、ブラジル連邦共和国の9ヵ国からの留学生です。留学生の皆さんは言語、文化、習慣の異なる日本において、人知れぬ努力と苦労をされたのではないかと思います。しかしこの経験は将来必ず役に立つときが来ると確信しております。
 私は今から二十数年前に米国のカリフォルニア工科大学で教育と研究を行っておりました。この大学に着任した当初は英語のリスニングができず、相手が何を言っているのか理解できず苦労しましたが、そのような時はその場でメモをしておき後で辞書で確かめました。段々リスニングが出来るようになりますと会話が楽しめるようになり、ヒューマンネットワークができ大学とアパートとの間を往復するだけの単調な生活から脱却し、うるおいのある生活になりました。今ではこのヒトのネットワークが世界に広がっており、私の無形な財産になっております。ですから、皆さんも日本でつくったヒューマンネットワークを大事にして何か問題が起こったら国際電話やインターネットを通して意見交換をし、問題解決に役立ててください。また日本の学位取得者も今後は海外で仕事をすることが多くなります。そのときは今いる留学生諸君とも提携できるような関係を築いておいてください。そして連合農学研究科はそのための中継基地として今後とも皆さんをサポートしていきたいと思います。
 さて、21世紀の今後を見通しますと、皆さんの目の前には巨大化した人間活動によって生じた問題、“エネルギー”、“環境”、“食糧”、“人口”、“温暖化”、“ヒトと動物の共通感染症“などの解決すべき諸問題が大きく立ちはだかっています。最近では地球の人口に関する予想では、現在63億の人口は皆さんが職業人としての役割を終え、引退する頃である西暦2050年には85億に達すると想定されております。地球上に、一定の生活水準で生活することの出来る人口の限界はおよそ100億と推定されていることからも、この85億という数字の重みをうかがい知ることが出来ます。そしてここから派生するいろいろな問題の解決に農学が極めて重要な役割を果たす時代がやってきます。本日学位を取得された皆さんには学位論文で研究対象とした分野の専門家としてばかりでなく、是非、農学が深く関わる地球規模の幅広い関連分野とその諸問題にも興味を持っていただき、専門家としての研究成果とともに社会に情報発信して頂きたいと願っております。
 皆さんが、活躍する21世紀という時代は、通信手段、交通手段の飛躍的発達により地球上の国家間の距離が、急速に縮まり、多くの問題の解決に、異なる分野の専門家との協力とともに、国と国の相互理解と相互協力が欠かせない状況になっております。その意味で、連合農学研究科を構成する三つの大学間の卒業生の交流とともに、国際的な同窓生の交流も大事にし情報交換を続けていただきたいと願っております。
 最後に、皆さんが、豊かな教養に育まれた、人間性豊かな人材として社会に貢献される事を期待するとともに、本研究科が、これからも国際的分野で活躍する人材要請の「要」となることを願って私のお祝いの言葉とします。

                              平成17年3月18日
                                  東京農工大学長 宮田 清藏

 


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