TEM(H-700H)の利用上の注意事項

観察時のトラブルが、共通の操作上のミスによるものが多いため、このページにまとめてみました。

トラブルの際は、必ず「利用記録簿」に不調内容やそのときの操作手順を記録するとともに、

高柳(内7188または7422)宛にもその内容を報告してください。

試料交換の注意

試料ホルダーをポートへ挿入するときやポートから引き抜く際に、手順を正しく行わないために真空を破る利用者がいます。

これは特に「蛍光板の損傷を引き起こしやすい」ので、特に慎重に操作してください。

1)ポートへ挿入するとき

・ポートの切り欠きにホルダーのピンを合わせて押し込みますが、押し込んでいってポートの裏側(装置背面側)で

カチッという音がすることを確認してください。

これにより、試料ホルダー先端が密閉されたことが確認され、中に閉じこめた大気を予備排気するステップに

進むことが可能になります。

カチッという音がしなかった場合は、一旦ホルダーを外へ完全に引き抜いて、改めて差し込んでください。

・制御盤の試料室予備排気スイッチを「Air」から「EVAC」へ倒し、試料室の真空状態が「赤パネル点灯」から

「青パネル点灯」へ切り替わるまで待ってください。

・「青パネル点灯」を確認してから、試料ホルダーの握りを「しっかり持って」約180度径方向に回転させ、

クランク上に中に押し込んでいってください。

180度くらい回すとホルダーが気圧差により中に吸い込まれます。しっかり持っていないといきなり

ホルダーが吸い込まれて、ホルダー損傷や試料脱落につながります。

2)ポートから引き抜くとき

・高圧を「必ず0へ」戻してください。

高圧がかかっているまま真空が劣化すると安全装置が機能して高圧が切れますが、各種回路等に負担がかかり、

装置の劣化を招きます。

・ホルダーを反時計方向に回して引き抜いていきますが、180度回した段階でそのまま止めてください。

・制御盤の試料室予備排気スイッチを「EVAC」から「Air」へ倒してから、ホルダーをポート外へ引き抜いてください。

制御盤の試料室予備排気スイッチを切り替えずにホルダーを引き抜くと真空が破れます。

真空が急激に破れたため鏡体内である種の圧力波が発生して、蛍光板の塗料をはぎ取ってしまうことがあります。

また、ホルダーをしっかり握っていなかったために急激に吸い込まれてホルダーが歪んだり、ホルダー先端の

サファイアチップが損傷したり、試料等の内部への脱落が生じることがあります。

これらは「明らかに注意不足」であるため、これに伴い発生したパーツ交換等の経費は所属研究室で負担して

いただくことがあります。

装置起動時や試料交換・フィルム交換時の排気について

・定常状態では気にしなくても構いませんが、装置起動時や試料交換・フィルム交換時はどこかのバルブやシール部が

完全に密閉されておらずリークが発生していることがあります。

・本体背面の床置きになっている3つのロータリーポンプからオイルミスと(油煙)が立ち上っていないかどうかを

確認してください。

・密閉されていないがために延々とポンプで排気し続けて、過負荷のためにポンプ内部のオイルが外へ排出されてしまい

部屋が白く煙っていた場合が何度もありました。

カメラ室の取り扱い

カメラ室内の「受け箱」「未露光フィルム箱」「移動車(「未露光フィルム箱」を乗せて滑るパーツ)」の取り扱い

についての注意です。

かなり精度よく構成されていることあり、少しずれていたりすると出し入れの際に抵抗となりやすくなります。

力任せに押し込んだり引いたりすることは厳禁。

(取り出す場合)

1)「受け箱」をカメラ室から取り出す際は、「受け箱」がカメラ室底面のストッパー(銀色の四角い金具)に

引っかからないように「受け箱」のハンドルを上に持ち上げてから取り出す。

2)「移動車」を手前に引く際に、ストッパーとして機能している「コの字型の金具」を上に持ち上げて

フレームごと引き出す。

#ストッパー役の「コの字型の金具」の持ち上げ方が少ないと引っかかって出ません。

(入れる場合)

1)「未露光フィルム箱」を「移動車」奥側の金属板(銀色)にきっちり載せる。

2)「移動車」を水平に保ちながら奥へ入れていく時、「移動車」は「左右に振らないこと」。

「移動車」の一番手前を心持ち上に持ち上げながら押し込むと引っかかるが、その地点で少し下げると

抵抗なく奥へ押し込めるはず。

3)「移動車」の最終位置では、手前のハンドルについている「コの字型の金具」が下に落ち込んで、

手前に引いても引っかかる状態(ロックされた状態)になるはず。

4)「受け箱」をカメラ室に設置した際、「受け箱」の手前にカメラ室底面のストッパー(銀色の四角い金具)が

完全に見えることを確認する。

#上記3)を無理に行うと、「コの字型の金具」を支えているパーツが位置ずれして、「受け箱」が正しい位置に

設置できなくなり、カメラ室底面のストッパーの上に乗り上げた状態になってしまいます。

このような状態の場合、遮光板やフィルムプレートが途中で引っかかるだけでなく、送りのためのギアを損傷する可能性が

高くなります。

ビームが蛍光板上に現れない

可能性としては

1)フィラメント切れ

2)物理的にビームを遮っている

3)撮影モードに入っている

です。

1)は加速電圧をかけながら、Filamentつまみを回してもメーターの針が動かなければフィラメントが切れています。

試料を取り出して、真空引きを終えて装置を停止した後、管理者へ連絡してください。

2)は「絞り」がビームを遮っている場合と「試料位置」が不適切でビームを遮っている場合にあたります。

「絞り」を0位置へ動かす(ビーム経路から完全に外れる)ことでビームが蛍光板に現れれば、

絞りの位置が不適切だったことを意味します。

「試料位置」はx座標、y座標をマイクロメータで0の位置(試料中心がビーム経路ほぼ中心に位置)とすることで

ビームが蛍光板に現れれば、試料位置が不適切だったことを意味します。

3)は観察窓右側のレバーを奥へ倒し直して下さい。

撮影の際にこのレバーを手前に引いて蛍光板をビーム経路から外し露光できるように準備しますが、

この段階ではビームを一時的にOFFとさせる機能が働きます。

時々、このレバーが若干手前にに倒れているためにビームが強制OFFされていることがあります。

ビームがでない場合はこのレバーを奥へ倒しこんでみてください。

フィラメント電流の設定

フィラメント寿命と輝度の両方を確保するために

・フィラメント電流は加速電圧に応じた適正値の設定を心がけてください

フィラメント電流を流しすぎるとフィラメントの寿命が極端に短くなります

(適正状態では、「毎日使用しても最低3ヶ月の寿命」があります)。

具体的には、

1)利用加速電圧を印加してFにする。

2)反時計方向に回しきられているフィラメント電流つまみ(Filament)を時計方向に回していって、

BeamCurrentメータ(加速電圧のメータと共用)の針が動かなくなる時点をを見つける(これが飽和電流位置)。

3)フィラメント電流つまみを少し戻してその位置にストッパーを合わせる。

各加速電圧ごとに適正なフィラメント電流が変わりますから、適宜ストッパーをずらしてください。

利用終了時の状態

次の利用者の便宜をはかるため、利用終了時に以下の2点を実行してください。

1)スポットサイズは4であることを確認

通常は「SpotSize=4」で使用していただくことになっていますが、ユーザーによっては変更して観測していることが

あると思います。変更した際は必ず終了時に4に戻してください。

2)ステージをx=0、y=0に戻す。

試料の移動範囲をはっきりさせるためにもホルダ位置は中央に戻してから終了してください。

空調と冷却水

本体使用時は数カ所ある発熱部の冷却のため、冷却水が流れるようになっています。

しかし、装置外部が十分空調されていないと「装置外壁に結露」し、これが装置のつなぎ目から中に侵入して、

真空劣化や錆の発生につながります。

内部に錆が生じてしまうと、部品交換となりますので月単位での装置停止につながってしまい、

高額な修理費用が必要となります。

装置使用時は「空調が機能していること」を確認してください。