単結晶X線自動解析装置

機器分析センターニュース(No. 4, 1996, Mar)

工学部 生命工学科 奥山健二

1.はじめに
分子の立体構造の研究方法には様々な方法があるが、未知の3次元構造について、最も正確、かつ詳細な情報が得られるのは、今日でもX線結晶構造解析である。結晶解析には、かなりの専門的な知識と、多くの計算量が必要であることは今でも変わりないが、自動回折計の普及、解析ソフトウエアの開発、そして何よりも計算機の大幅な進歩により、良好な単結晶の得られる低分子化合物であれば、結晶解析の専門家でなくても比較的容易に構造解析が行えるようになってきた。ここでは、本学の単結晶X線自動解析装置の概要、性能、利用方法について述べる。
2.装置概要
2.1 単結晶自動解析装置(RASA-5RII)
本装置は、単結晶試料からの回折X線を自動測定する測定部、および回折データをもとに結晶構造解析を行う解析部から構成されている。測定部はX線発生装置、四軸型回折計(1)、制御用パーソナルコンピュータPC/AT(compatible)から成り、測定用ソフトには測定に必要な標準パラメータが設定されているため、単結晶試料さえ装置に取り付ければ完全自動測定も可能である。構造解析はPCとEthernetで接続された3次元グラフィックスワークステーションIRIS INDIGO(Silicon Graphics)上で実行される。構造解析に必要なプログラム(直接法、最小二乗法、作図プログラムなど)はパッケージ化されており、簡単な化合物であればマウス操作のみでも構造解析が可能である。解析結果のグラフィックス等はpost scriptプリンターに出力される。有機、無機を問わず、分子量1500程度までの化合物であれば、本システムで解析可能である。
測定部
回転対陰極型X線発生装置(理学電機(株)RU-200)
(対陰極CuあるいはMo) 最大定格出力 60kV, 200 mA
四軸型回折計(理学電機(株)AFC-5型)
X線検出器 シンチレーションカウンター
制御用計算機 PC/AT compatible
(主記憶容量4MB, ハードディスク122MB)
解析部  
解析用計算機 IRIS INDIGO ENTRY (Silicon Graphics)
(主記憶容量16MB, ハードディスク432MB + 1GB)
レーザプリンター(Canon A404PS Lite)
2.2 X線自動粉末回折装置(RAD-IIC)
本装置は、粉末試料、フィルム状試料、基板上に累積した膜状試料など、低分子、高分子を問わず様々な固体試料からの回折X線を自動測定する。粉末広角回折用ゴニオメーター(2)のほか、X線小角散乱測定用ゴニオメーターも設置されており、透過法だけでなく反射法による小角散乱測定も可能である。測定の制御、および測定データの処理(ピークサーチ、面間隔算出、バックグランド除去、スムージング、多重プロットなど)はパーソナルコンピュータ上で行われる。測定、解析結果はプロッターに出力される。
封入管式X線発生装置(理学電機(株)Geigerflex) (対陰極Cu) 最大定格出力 50kV, 40 mA X線検出器 シンチレーションカウンター 制御、解析用計算機 CASIO FP-7000(5インチ2HDフロッピーディスクを使用) プロッターライタ (Rigaku, WX4731)
3. 設置場所
  機器分析センター機器室3
4. 利用方法
分析センター機器室3室内の予約表に日時を記入することにより、予約制で自由に利用できます。初めて使用される方は下記の問い合わせ先にご連絡ください。初心者講習会等は行っておりませんが、装置使用未経験者(特に単結晶自動解析装置)には随時指導いたします。なお、本装置を使用される方は「東京農工大学放射線障害予防に関する実施細則」により、予めX線装置取り扱い従事者としての登録が必要です。
問い合わせ先:
工学部生命工学科 生体物性講座 奥山健二 内線7028
5. 本装置を利用した研究例
(1)合成二分子膜の単結晶構造解析
(2)界面活性剤−芳香族化合物複合体の結晶構造解析
(3)反強誘電性を示す化合物の結晶構造解析
(4)オリゴ糖の結晶構造解析
(5)シクロデキストリン包接体の結晶構造解析
(6)オリゴペプチドの結晶構造解析
(7)有機金属錯体の結晶構造解析
(8)非線形光学効果を示す化合物の構造解析
(9)ポリマー中における無機塩の結晶化挙動の研究
(10)ポリマーの相溶性に関する研究
(11)LB膜の長周期構造の研究
(12)液晶性物質の構造研究
(13)希土類元素を含む発光性物質の構造研究
6. おわりに
低分子化合物で、一辺が0.3〜0.7mm程度の単結晶が得られれば、本装置で解析可能である。単結晶自動解析装置はメンテナンス期間以外はほぼ24時間稼動しており、粉末回折装置もほぼ毎日稼動している。現在の主な利用研究室は10研究室ほどである。本装置の利用に関心のある方は、ぜひ問い合わせ先までご連絡ください。

注:旧データのままです。