物理システム工学科3年次「物性工学概論」第4回、2003.5.6配付資料

佐藤勝昭教官(量子機能工学分野教授)専門分野:固体物理学

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第3回に学んだこと

 金はなぜ金ぴかか?金属の光学的性質:

           金属の色:金、銀、銅、鉄、白金

           3原色:加法混色と減法混色/CIE色度図
光の3原色(加法混色

                    各色の強さを変えて混ぜ合わせると,いろいろな色の光になる。赤い光,緑の光,青い光を同じ強さで混ぜ合わせると, 白い光になる。

           ・色の3原色 (減法混色)

                    各色を混ぜ合わせるといろいろな色ができる。マゼンタ・シアン・イエローを同じ割合で混ぜると黒になる。

             色の3原色(マゼンタ、シアン、黄)は光の3原色(緑、赤、青)の補色である。

           ヒトが色を認識する仕組み
3種類の錐体の刺激の程度により色を感じる

           貴金属の色:選択反射

           金属中に光がはいると金属中に振動電界ができる。この電界を受けて自由電子が加速され集団的に動く。

                    電子はマイナスの電荷を持っているので、電位の高い方に引き寄せられる。その結果電位の高い方にマイナスの電荷がたまり、電位の低い側にプラスの電荷がたまって、電気分極が起きる。

                    外から金属に光の電界が進入しようとすると、逆向きの電気分極が生じて電界を遮蔽してしまって光は金属中に入れない

           電子分極の古典電子論:自由電子のプラズマ運動

           誘電率と屈折率・消光係数

           負の誘電率の意味するところ

 

第3回の問題

問:さまざまな色が3原色によって表される理由を述べよ。

標準解答:ヒトの網膜には色を感じる錐体という細胞があるが、錐体には赤、緑、青の波長にピーク感度をもつ3種類の細胞がある。ヒトはこれらの3つの細胞の刺激の程度によってすべての色を感じる。

 

第3回の質問

1.       黒板に書いたダンピング項というのは、どういう現象をさすのですか(HK)。ダンピング項とはなんですか(SK)。→A. 摩擦と同様に、速度du/dtに比例する力の項です。1年次の力学で学んだはずです。電子が格子振動によって散乱されたり、不純物と衝突したりして、エネルギーを失うのです。2年次の学生実験「力学振動」で減衰振動をやったはず。ダンピングとは減衰のことです。

2.       du/dtの比例定数がm*/tで表されるのはなぜか。(KT)A. tは緩和時間と呼ばれますが、衝突までの平均自由時間と考えることができます。1/tは単位時間に衝突する確率になります。初期条件du/dt=0のもとにm*d2u/dt2+(m*/t)du/dt=0という運動方程式を解くと、両辺を積分してm*du/dt=-(m*/t)u+C du/dt=a exp(-t/t)-C/m*t=0において、C = a m*du/dt=a(exp(-t/t)-1) その解は減衰運動で、その減衰の時定数はtになります。

3.       恒星は青、白、黄、赤とあるが、白色に輝く星は熱温度が高いだけで波長は緑くらいなのですか。(FH)A. 白い恒星のスペクトルは赤、緑、青の範囲にひろがっているので白いのです。赤い星も青い星も、単一のスペクトルではなく、広がったスペクトルでピークが赤、青にあるだけで、やはり白です。

4.       光の3原色以外で作る色で、「ブラックライト」があるが、あれはどう人の眼に入っているのですか。黒は光では作れないはずではないのですか。(YT)A. ブラックライトは、紫外線を出す水銀灯です。可視光も多少出ていますが、可視光線をカットして紫外線のみを通すフィルターをかけているので、色が見えないのです。紫外光を蛍光体に当てると可視光線を発光します。ブラックライトを見てはいけません。

5.       補色とは何ですか。(SK)A. 白色の色のうち、フィルターで青色をさえぎったとすると、赤と緑の色が通り抜けて黄色に見えます。こんどは緑色をさえぎると、赤と青が通り抜けてマゼンタ(赤紫)に見えます。こんどは赤をさえぎると青と緑が通り抜けシアン(青緑)に見えます。青と黄、緑とマゼンタ、赤とシアンのような関係を補色といいます。光の三原色と色の三原色は補色の関係にあるのです。

6.       金属の分極によって電界が遮蔽されると光が入れないということのイメージがわかりにくいです。(KN)A. 光は電磁波です。金属で囲まれた箱の中にラジオをおいても電波が届かないですよね。鉄筋コンクリートのビルの中で電波が届きにくいのと原理的に同じ現象です。

7.       金属の光の反射については少しわかったけど、ダイヤモンドや水が光を反射するのも同じなんですか。(AW)A. 金属の反射は自由電子によるものです。ダイヤモンドの反射率はそれほど高くありません。キラキラ輝くのは、ブリリアントカットなどの加工によって、光が全反射して帰ってくるからで、電子によるものではありません。水の反射、ガラスの反射は、屈折率が空気と異なることによるものです。

8.       ガラスなど透明物質は分極が起こらず、反射がほとんどゼロで透過してしまうと言うことなのか。(EM)A. ガラスにおいても分極が起きます。ガラスに入った光は、ガラス内では分極波を引きずりながら伝わるので、光速は真空中の光速より遅くなるのです。遅くなる程度が屈折率です。

9.       生まれつき色が見えにくい人は、感じる波長の間隔が狭いのか、受けられる刺激が弱いのかどちらですか。(MS)A. 先天色覚異常は錐体の異常によって生じます。錐体は、光の波長のどのあたりに強い感度を持つかによって、3種類に分類されます。このうち、長波長側に感度のピークを持つ赤錐体系に異常のあるものを第1(赤)色覚異常、中波長領域にピークを持つ緑錐体系に異常のあるものを第2(緑)色覚異常といいます。これらの色の見え方には大差がないため、両方あわせて赤緑色覚異常と呼んでいます。(ぱすてる:色覚の問題を考えるボランティアグループのWeb-site http://www.pastel.gr.jp/index.htmlより)

10.    光強度の反射率を振幅反射率から求めましたが、2つの違いは何ですか。(YD)A. 光の電界Eについての反射率が振幅反射率(フレネル(Fresnel)係数ともいう)、光の強度すなわち光の電力は|E|2に比例しますから、強度の反射率は振幅反射率の絶対値の二乗なのです。

11.    復習すれば質問が出てくると思うが、後のテーマになったときに前のテーマの質問をしていいですか(SY)A. もちろんいいです。わからないことは何でも聞いてください。

注文

12.    黒板に書くスピードが速すぎてわからなくなってしまいます。「あれが」「こうなるから」などの言葉が多く、結局何がどうなのかわかりません。(SK)A. 無意識にそのような言葉を使っているのですね。気をつけます。その場で指摘してくれるとありがたいのですが・・。

13.    時々、独り言のようにはしょって話す時が悩む。繰り返しがほしいです。(ST)A. はしょって話す内容はたいしたことないんだと思って聞き流してください。あまりひどいときは、指摘してください。

14.    先生の出す質問はむずかしいと思います。OHPをダウンロードして友達に教えてもらいましたが、はじめからがんばって聞いていても、自力では何のことやらわかりません。情報量が多すぎて早すぎるので、得意でない人間には、ちゃんときいてもわかりません。(MT)A. 得意・不得意はだれにもあるもので、すべての科目まんべんなく授業を聞いただけで100%わかるなんてことは、不可能に近いことです。もし、ほんとうにわかりたいと思ったときに、自分で本をさがして読んだり、紹介されたWeb-siteを見たりして勉強してください。私も、色のこと、光のことに興味を持ったので、長年にわたっていろいろ調べて知識を蓄えた結果の一部を紹介して、みなさんにすこしでも興味を持ってもらおうと思っています。できるだけわかりやすいように、とっつきやすく努力しますが、短い時間で、いろんな学科のいろんな学力レベルの方すべてに、内容や意味までも完全にわかる講義をするなんてことは不可能です。

 


第4回で学ぶこと:

第3回の補足:

スペクトルとは

光学定数(屈折率と消光係数)

マクスウェルの方程式

 

半導体の光学現象

           半導体とは何か

           半導体にはどんな物質があるか

           バンド構造とバンドギャップ

           半導体の透過色、反射色

           吸収スペクトル:バンド間遷移

           シリコン結晶の金属光沢の原因は?

 

周期表と半導体

      IV(Si, Ge)

      III-V(GaAs, GaN, InP, InSb)

      II-VI(CdS, CdTe, ZnS, ZnSe)

      I-VII(CuCl, CuI)

      I-III-VI2(CuAlS2CuInSe2)

      II-IV-V2(CdGeAs2, ZnSiP2))

IIB

IIIB

IV

V

VI

 

B

C

N

O

 

Al

Si

P

S

Zn

Ga

Ge

As

Se

Cd

In

Sn

Sb

Te

Hg

Tl

Pb

Bi

Po

 

半導体の構造

      ダイヤモンド構造

      閃亜鉛鉱(ジンクブレンド)構造

      黄銅鉱(カルコパイライト)構造

      非晶質(アモルファス)

 

半導体の結合

      共有結合

      結合軌道・反結合軌道

 

半導体単結晶の作製法

      引き上げ法

      ブリッジマン法

      帯域溶融法

 

半導体の電気的性質

      金属と半導体の抵抗の温度変化の違い

      キャリア数と移動度

      ドーピング

 

半導体の電子構造

      バンド構造

      価電子帯、伝導帯、エネルギーギャップ

      有効質量

      フェルミエネルギー

 

半導体のpn接合とデバイス

      n型半導体、p型半導体

      空乏層

      拡散電位差