カイコの性クロマチン

 哺乳類では、X染色体上にはクルコ−ス6燐酸脱水素酵素の遺伝子など基質代謝に欠かせない酵素の構造遺伝子や色覚や血液凝固のような生存には欠かせない遺伝子が数多く存在する。♀(XX)と雄(XY)のX染色体にある遺伝子の量を等しくさせるために♀のX染色体のうち1本が不活性化する(ド−セ−ジ補償機構)。不活性化したX染色体はバ−小体となり観察される(オリンピックなどで行なわれるセックス・チェック)。  
ヒト 性染色体構成 バ−小体数 表現型
XX 正常女性
XY 正常男性
XO タ−ナ−症候群
XY 睾丸性女性化症候群
XXX トリプルX症候群
XXY クラインフェルタ−症候群


 鱗翅目昆虫の核内には、特異的に凝縮したクロマチンが存在し、W染色体と対応関係にあることが知られいる。カイコでは雄(ZZ)では観察されず、雌(ZW)では1個観察される。また4倍体の雌(ZZWW)では2個観察される。
カイコ 倍数性 性染色体構成 SB数 表現型
2n ZZ
2n ZW
3n ZZW
4n ZZZZ
4n ZZWW
6n ZZZZWW


  
●蛾の吸胃の細胞で性クロマチン(SB)の観察

1.蛾の腹部をハサミで切る。
 
2.水中で胸部から腹部へと指で押すと吸胃が出てくる。


難しい時は解剖皿に蛾を乗せ、解剖する。水色矢印が吸胃



3. 吸胃をスライドガラスの上にのせ、吸胃を切り開く。
 

4.軽く乾燥させる(酢酸オルセインを滴下した時に浮かないようにする。
  また、完全に乾燥させてはいけない)。

5.酢酸オルセインを1〜2滴滴下し、約5分放置。カバ−グラスをかけ15〜30分染色する。
 
* 酢酸orcein ; 45%酢酸 100mlに1gのorceinを溶かす。

6.押しつぶし、顕微鏡観察をおこなう(押しつぶす際、染色液が滲み出るので注意すること)。


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