連関と組み換え
 一般にある2つの遺伝子間の連関は原則として雌雄による差は無い。多少の性差が報告されたものがないのではなく,トウモロコシ,バッタ,マウス等で,交叉率が数%雌雄間で差がみられることが報告されている。

例外 ショウジョウバエ;雌で交叉がおこり,雄では起こらない(1912,モルガン)。
    カイコ;雌で交叉が起こらず,雄では起こる(1913,田中)

●カイコの斑紋と体色を利用した連関と組み替え
Ze(虎蚕)lem(レモン)はともに第3連関群に属し,それぞれ 1.5及び22.3に座位する。
E
系統(虎蚕・正常体色;Ze lem /Ze lem)とF系統(レモン;+ Zelem /+ Zelem)の
1(虎蚕・正常体色;Ze lem /+ Zelem)にF系統(レモン;+Ze lem /+Ze lem)を戻し交雑した次代の幼虫斑紋と体色を調査することによって,遺伝子の連関と組み替えの起こることを観察し,両対立遺伝子(Zelem)の組み替え率を求める事ができる。

×
系統名:形質 E系統:虎蚕・正常体色 F系統:正常斑紋・レモン
遺伝子型 Ze lem/Ze lem Ze lem /+Ze lem
F虎蚕・正常体色
Ze lem/Ze lem

 交雑形式(A), (B), の斑紋と体色(虎蚕斑紋の有無とレモン体色の有無)を調査して,組み替え率を算出する。
(A).(E系統×F系統)×F系統 
×
Fの雌 虎蚕・正常体色 F系統の♂:正常斑紋・レモン
虎蚕・正常体色 正常斑紋・レモン 虎蚕・レモン 正常斑紋・正常体色
非交叉型 非交叉型 交叉型 交叉型
出現しない 出現しない
カイコは雌で組み換えが起こらないので、この交雑形式から交叉型の蚕(虎蚕・レモン、正常斑紋・正常体色)は出現しない(雄で組み換えても同じ遺伝子型の配偶子しかできない)。

(B). F系統×(E系統×F系統)
×
F系統の雌 正常斑紋・レモン Fの♂虎蚕・正常体色
虎蚕・正常体色 正常斑紋・レモン 虎蚕・レモン 正常斑紋・正常体色
非交叉型 非交叉型 交叉型 交叉型
雄で組み換えが起き、この交雑形式では交叉型の蚕が出現する。

組み換え値は 「調査個体数」に対する「組み換え個体数」の割合(%)なので上表の結果から

         (虎蚕・レモン個体数+正常斑紋・正常体色数)/(調査個体数)×100
        =(93+82)/(464+429+93+82)×100
        =16.4% となる。


●カイコの卵色を利用した連関と組み替え
 pe(淡赤眼白卵)re(赤卵)はともに第5連関群に属し,それぞれ 0.0及び31.7に座位する。B統(正常卵;+pe +re/+pe +re)とD系統(pe re / pere )のF1 にD系統を戻し交雑した次代卵,またはF2 の卵色を調査することによって,遺伝子の連関と組み替えの起こることを観察し,両対立遺伝子(pere )の組み替え率を求める事ができる。
系統名 形 質 遺伝子型
B系統 正常卵 +pe +re/+pe +re
D系統 白 卵 pe  re/ pe  re
×
系統名:形質 D系統:淡赤眼白卵 B系統:正常
遺伝子型 pe  re/ pe  re +pe +re/+pe +re
F正常
pe  re/+pe +re
交雑形式 産下卵
(1).    
     D系統×(D系統×B系統)
(2).    
(D系統×B系統)×D系統
(3).    
(D系統×B系統)×D系統×B系統)2
●交雑形式(1), (2), (3)の卵色を調査して,組み替え率を算出する。




 形質(表現型)で交叉型として識別できるのは赤卵だけであり,その割合は全交叉型数(n+n)の 1/2にあたる。よって pe-re間の組み替え率は次式によって求められる。

  組み替え率(%)= 100×(n+n)/(m+m+n+n)=100××(赤卵数)/(全観察卵数)

pere の上位にあるので(pe +re/ pe +re), ( pe  +re/ pe  re), (pe  re/ pe  re )の個体(卵)は( re に関わらず)白卵となる。  つまり、pe がホモ型になるとreに関わらず白卵、+pe +reの両方を持つと正常卵になる。

参考書 雑種植物の研究/メンデル(岩波文庫、420円)

その他参考書,家蚕生化学/伊藤智夫,昆虫遺伝学/田中義麿,家蚕遺伝学/田中義麿,総合蚕糸学 /福田紀文など

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