カイコ の 卵 巣 発 育(Ovarian development)

 昆虫の卵巣小管(卵管:ovaarilole)は3つの型に分類される(図1)。
A.無栄養室型(panoistic type):トンボ目,シミ目,カワゲラ
B.多栄養型(交互栄養室型)(polytrophic type):鱗翅目,双翅目,鞘翅目
C.端栄養室型(telotrophic type):半翅目.


 卵形成(oogenesis)は成虫期に行うものと蛹期(カイコ)に行う
ものとがあり,その昆虫の生活史と関連しており,ホルモンによる
発育制御をうけている。

 カイコの卵巣(ovary)は精巣と同じく幼虫の第8 節の背面に1対
存在し,三角形をなし,その外側に紐体が付着している。
 孵化時期には 100個前後の始原生殖細胞(primordial germ cell)を
含んでいる。卵巣は孵化3〜4日頃に4個の小室に分かれ,卵管を形成する。
卵管は経過とともに伸長し,化蛹2日目頃共同被膜が破れ,腹腔にでる。
 卵管内では,先端部で卵原細胞(oogonia)が分裂,増殖を繰り返し,
卵管を降下して,1個の卵母細胞(oocyte, egg cell)と7 個の栄養細胞
(nurse cell)に分化する(ショウジョウバエでは1卵母細胞に対して
31栄養細胞)。この8 個の細胞に包卵被膜細胞(follicle cell)が加わり
卵胞(follicle)を形成する。



調査項目
1. 幼虫期の卵巣の位置と形態観察(精巣も卵巣も何故第8 節にあるのか?)
 その位置を決定するためにはどのような機構が考えられるか?)
         
2.蛹期の卵巣(卵管)の形態観察:化蛹5日目の蛹を解剖して卵巣小管を摘出して
メエチレン・ブルーで軽く染色。実体顕微鏡で観察する。






カイコ の 精 巣 発 育

 カイコの生殖細胞(reproductive cell, germ cell)は,胚盤から胚原基が分化した直後に1群をなして出現する(産下約16時間)。その後,分散する傾向を示す。原始環節が識別される時期(産下36-39時間)に生殖細胞の分布は胚子(embryo)の第6-9 節に多く観察される。

 産下60時間頃から体腔嚢が破れ,その腹壁が生殖細胞群を取り囲み,第6 〜9 節の各節ごとに生殖腺(gonad)を形成し始める。これとともに生殖細胞の分裂,増殖がおこり,生殖腺も第8 節に向かって前後から収縮し,反転完了期(産下84時間)頃に第8 節背面に移動を終える。

 幼虫の精巣(testis)は第8 節背面,星状紋のある部分の皮膚の下に,背脈管をはさんで左右に1対ある。卵巣(ovary)に比べ丸みがあり,腎臓形を呈し,その凹面で相対している。 孵化時には内部の区画が明瞭ではないが,間もなく隔壁が発達して,普通,4個の精室に分かれる。

調査項目
1.  幼虫を解剖し,体節と精巣の位置関係を調査する(本当に第8 節にあるのか? 発育段階により位置は変わらないのか?)。
2.精巣及び付属器官の形態を実体顕微鏡で観察する(スケッチ)。
3.精室の数を調査する(本当に4個に分かれているのか?)。
4.精巣を解剖し,内部の状態を実体顕微鏡で観察する(スケッチ)。




参考書:昆虫発生学.培風館,蚕種総論.全国蚕種協会刊
参考文献:Sado,T. Spermatogenesis of the silkworm and its bearing on the radiation induced ssterlity.  Jap.J.Geneet.,36,136-151(1961)



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