カイコ幼虫の内部形態
器具:実体顕微鏡、解剖皿、虫ピン、解剖鋏、ピンセット、柄付き針、メス(切れない時は刃を交換)
材料:カイコ終齢幼虫 | |
黄血蚕を使うと絹糸腺や生殖巣が観察しやすい。 | |
白血蚕 (標準型) |
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黄血蚕 体液が黄色いため腹脚や尾脚が黄色く見える | |
油蚕を使うと翅芽(羽原基)が解剖せずに観察できる。また、背脈管もよく見える。 |
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姫蚕 |
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油蚕 真皮細胞中に尿酸塩の顆粒が蓄積しないため幼虫の皮膚が油紙のように透明な蚕 |
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白卵や赤卵の蚕を使うと神経球が白や赤色となり観察しにくい。 |
眼状紋 半月紋 星状紋 尾角
頭部 胸脚 気門 腹脚 尾脚
消化管 生殖巣 背脈管
翅芽 縦走気管 絹糸腺 神経
●腹側から解剖
1.幼虫を仰向けにして解剖皿にのせる。
2.頭部と胸部の間に虫ピンを刺す。幼虫を引伸ばして尾脚部に虫ピンを斜めに刺す。
虫ピンを真っ直ぐ刺すと解剖しにくい。
2.解剖皿にたっぷり水(水道水で大丈夫)を入れ、
幼虫を浸す(カイコは水に数十分漬かっていても窒息しません)。
水が↑のように少ないと水面張力で光が乱反射し、観察しずらい
4.解剖ハサミ(メス)で腹の皮を切る。
深く解剖ハサミを入れると腸を傷つける(下図:左)
5.皮を広げ、四隅を虫ピンでとめる。
腹部第5節(腹脚の位置で確認:矢印)を虫ピンでマークしておく(生殖巣の観察の為)。
各組織には気管がくっついているので観察する時に気管を外す。
昆虫の生物学/玉川大学出版部 p65改変
左右1対ある絹糸腺(絹糸を生成する器官)
吐糸孔 フィリッピ腺 中部糸腺 後部糸腺
キチン質 前部糸腺
7.前部、後部の消化管を鋏で切り、消化管を外す。
G実体顕微鏡で腹部第5節(↑印)にある生殖巣(半透明)を観察(スケッチ)する。
小型三角形ならば卵巣(図4)、大型腎臓型なら精巣(図5)。
幼虫の卵巣 | 幼虫の精巣 | |
1:卵巣 | 1:精巣 | |
2:紐体 | 2:紐体 | |
3:紐体末端 | 3:ヘラルド腺 | |
4:石渡氏腺の位置 |
卵巣は精巣に比べかなり小さい(バー:1mm)
精巣(青矢印)と絹糸腺(赤矢印) 左:黄血蚕、右:白血蚕
黄血蚕は生殖巣巣に黄色く色がつくので生殖巣が見つけやすい
絹糸腺も中部絹糸腺部分が黄色くなる。
実体顕微鏡で背中中央にある背脈管(循環器)を観察する。
脂肪体 | 網状筋肉 | 生殖巣 | ||||||
背脈管 | 筋肉(上部半分は除く) | 気管 |
●背中側から解剖
1. 幼虫を解剖皿にのせる(背脈管が動いている事を確認、(図6-2)。
2. 胸部第1節と第2節の間に虫ピンを刺す。
3. 解剖皿にたっぷり水を入れ、幼虫を浸す。
幼虫を引伸ばして尾脚部に虫ピンを刺す。
4. 解剖鋏(メス)で背脈管(背中の中央部)に沿って皮を切る。
この時深く鋏(メス)を入れると中腸を傷つけてしまうので注意。
5.皮を広げ、四隅を虫ピンでとめる。
E消化管(食道・中腸・結腸・直腸)、マルピギー管(排泄器)を観察する(図2−2)。
中腸 結腸 直腸 |
食道 気管 後部糸腺 マルビギー管 |
前部、後部の消化管を鋏で切り、消化管を外す。
実体顕微鏡で第1気門の付け根にある前胸腺(透明:エクダイソンを分泌する組織)と
呼吸器である 気管(黒色の管)
気管枝 気管灰白部 縦走気管 横走気管 | |||
第1気門 翅芽 腹面縦走筋肉 絹糸腺 神経節 前胸腺はここにある |
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→ | 気管白色部 | 絹糸腺に気管が附着している |
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→ | 横走気管 | ||
→ | 縦走気管 | ||
→ | 気管枝 | ||
→ | 神経節 | ||
→ | 絹糸腺 |
胸部2,3節 縦気管の下 左右、2個づつ |
脂肪体に埋もれている 白い部分が目印 |
脂肪体を取り除き | 取り出した翅芽 |
脂肪体(黒矢印:白い帯状)を注意深く取り除いて 各節の中央部に1個づつある神経節(赤矢印:中央部 小豆色)と神経索(白色)
前額神経球 食道下神経節 腹部神経節
脳 食道円続神経 交感神経 交感神経 交感神経
赤矢印:神経球、黄色矢印:神経索、黒矢印:脂肪体
●頭部を解剖
1.胸部第1節と第2節の間を切断し、頭部を解剖皿にのせる。腹側に虫ピンを刺す。
2. 頭部の上部後ろから解剖鋏で切れ目を入れる。
この時深く鋏を入れると脳を割ってしまうので注意。
3.ピンセットで頭蓋を左右に割り、虫ピンでとめる。
C実体顕微鏡で食道上の脳(小豆色)〜アラタ体(白色:幼若ホルモンを分泌する器官)を
観察。
Br:脳 SG:食道下神経節 | |
A:幼虫、B:頭胸部、 Br:脳、SG:食道下神経節 CA:アラタ体、PG:前胸腺、S:第1気門、DV:背脈管 PL:第1胸脚、FG:前額神経球 |
食道 前額神経球 CA:アラタ体 |