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カイコガオスは如何にしてメスの性フェロモンを感受するか
性フェロモン受容体の遺伝子
[ 京都新聞電子版ニュース(2004年11月26日):一部修正 ]
カイコガのオスがメスの「性
フェロモン
」を感知する性フェロモン受容体の遺伝子を,京都大学農学研究科の西岡孝明教授(昆虫生理),大学院生の櫻井健志さんらの研究グループが確認し,15日発行の米国科学アカデミー紀要で発表した。動物の性 フェロモン 受容体の遺伝子が確認されたのは世界初で,ファーブルが観察して以来100年がかりで謎が解決された。たった1分子の フェロモン でも感知できる「超高感度センサー」の機構解明にもつながる成果という。
メスが分泌する微量の性フェロモン(左写真)をカイコガのオスは,触角(右写真)で感じてメスに近づくことが知られている。西岡教授らはカイコガの遺伝子からオスの触覚だけで働いている112の遺伝子を選びだし,その中からこれまで知られていない配列の候補遺伝子を見つけた。この遺伝子をメスのサナギ(蛹)に注入して働かせたところ,そのメスは本来反応しないはずの性 フェロモン に反応,性 フェロモン 受容体の遺伝子であることが確認された。
西岡教授は「今後,受容体タンパク質の結晶構造を解析すればセンサーの機構解明が期待できる」といい,「ファーブルが『昆虫記』で蛾の性行動を記述してちょうど100年という年に受容体を同定したのも因縁かもしれない」と話している。
【 性
フェロモン
】 異性を誘引するなどの性行動で体外に分泌される化学物質である。ファーブルは1904年,オオクジャク蛾のオスがメスの「におい」に誘引される様子を「昆虫記」に記している。性
フェロモン
自体は1959年,ドイツの化学者ブテナントがカイコで発見(化学名ボンビコール)しノーベル賞を受賞した。しかし,性
フェロモン と結合する受容体は見つかっていなかった。
2種類のセンサーで フェロモン を感知:カイコガの実験で確認
[ 朝日新聞2005年02月05日(土):一部修正 ]
カイコガの成虫のオスが,メスの出す性 フェロモン を遠くからかぎつけるのは,2種類のセンサーを組み合わせて使っているからだとわかった。高感度センサーの開発に役立つ可能性をもつ成果である。東京大学と京都大学の研究チームが3日付の米科学誌サイエンス電子版に発表した。
体外に発散する化学物質のうち,異性を引き付ける働きをするのが性 フェロモン で,カイコガのオスは触角で感知する。研究チームの東原和成・東京大学新領域創成科学研究科助教授や西岡孝明・京都大学農学研究科教授らは昨年そのセンサー遺伝子を世界で初めて見つけた。
これを人工的にカエルの卵に組み込んでみると性 フェロモン に対する反応が実際よりもかなり鈍かった。ほかにも仕組みがあるはずだと探求し, フェロモン センサーと一緒にオスの触角の毛に存在する「BomOR2」というにおいセンサーを一緒にカエルの卵に入れると感度が100〜千倍も上がることを突き止めた。このにおいセンサーは,薬の候補物質を調べる高感度の検査システムに使える可能性がある。
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