機能的光OCT
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OCTはOptical Coherence Tomographyの略称で,生体にやさしい光を用いて,生体組織の高精度な断層像を撮像する技術です.10ミクロン〜20ミクロン程度の時間コヒーレンス長をもち,主に波長が0.8ミクロンから1.5ミクロンの近赤外光源とマイケルソン干渉計から構成されています.

図1は,眼底の断層像を観察することを想定した,OCTの原理です.
光源からの光は分離され,一方の光は眼底に照射され,他方は参照平面鏡に照射されます.眼底の網膜で反射された光と参照平面鏡から反射された光は,検出器によって干渉強度として検出されます.このとき,眼底と参照平面鏡からの反射光の光路長差がコヒーレンス長以下のとき,干渉強度が観測されます.次に参照平面鏡を後方に移動させます.網膜の下層の構造で光学的に異なる部分があると,反射された光の光路長と参照平面鏡からの反射光の光路長との差が再びコヒーレンス長以下になったとき,再び干渉強度が検出されます.このような操作を眼底上の位置を変えながら繰り返すことによって,3次元の断層像を観測することが出来ます.図2は,セロリの茎の表層を500ミクロンの深さまでを断層撮像する過程を示します.

近赤外光は,生体の組織の深い部分(最深で1mm〜3mm程度)
図1 OCTの原理
図2 セロリの茎の部分の断層撮像
まで光が侵達するという性質があるため,スーパールミネッセントダイオードSLDが光源として一般的に用いられています.しかしながら,光が深くまで侵達するということは,途中の構造を透過していることになります.さらに,波長が長いため横分解能が低下します.そこで,私たちはOCT光源の短波長化を提案しています.波長の短い光源として,可視光のLEDを利用してます.図3と図4には,それぞれ近赤外光と可視光で撮像されたコオロギの後肢の断層像を示します.図より,可視光を用いると,侵達深度は小さいものの,表層の細かい構造まで分解されていることが解ります.さらに,LEDの中心波長は,可視光から近赤外光まで,非常に多くの種類がありますので,その中心波長を変えることによって生体組織の構造と特徴をより詳細に解析できる可能性があります. 
図3 コオロギの後肢 波長840nmのSLD光源 
図4 コオロギの後肢 波長640nmのLED光源