花粉センサー
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スギやヒノキの花粉は,2月〜5月の期間,北海道を除く日本全土の大気中に広く飛散しています.この花粉によって誘発されるアレルギー症状,すなわち花粉症の有症率は、全国で10人に1人,大都市では,5人に1人といわれています.(環境庁「花粉症保険指導マニュアル」より)花粉症はもはや日本の社会問題であり,医学的治療法と予防法の確立が急がれています.予防においては,花粉飛散予想やリアルタイムの情報サービスが必須です.

現在,花粉の飛散情報は,各地区の保健所が発信しています.保健所では,ダーラム法やBurkard Volumetric Spore-Trap法によって採取した花粉を顕微鏡で計数しています.このような方法は,花粉の種類を正確に分類できる利点がありますが,リアルタイムの情報サービスには不向きです.したがって,リアルタイムに花粉を計数するためには,花粉センサーの開発が必要です.私達の研究室では,神栄株式会社(現,神栄テクノロジー株式会社)との共同研究によって,リアルタイム花粉センサーを開発しました.

花粉は,約30ミクロンの大きさをもち,その形状は椀状かほぼ球状の粒子です.特定期間に飛散している花粉の90%以上がスギ花粉であることから,
花粉とそれ以外の物質との分別を目標にしました.そのためには,散乱光の強度と偏光度を測定して,それぞれについて散乱体のサイズと電気的特性を対応させることによって,認識率の向上を図りました.

図1には,光学系のブロック図を示します.散乱光の平行偏光成分と垂直偏光成分を同時に計測し,偏光度を算出します.図2には,散乱角をパラメータに算出された偏光度の変化を示します.この図の結果は,光学系の配置を決定するのに利用しています.図3は,最終的に完成した花粉センサ−を示します.ほぼ10cm×10cmの大きさのセンサーとなっています.詳細は,神栄テクノロジー株式会社のホームページを参照してください.

図1 強度と偏光度を測定するための光学系
図2 光学系を決定するための実験結果
図3 最終的に完成した花粉センサー