拡散光トポグラフィ法と血管イメージング
拡散光トポグラフィ法は,生体に照射される光に対して強い吸収をもつ領域が存在するとき,照射面に発生する後方散乱光の空間分布の変化を利用して吸収体の表面形状を再構成する手法です.

図1には,皮膚にレーザ光を集光照射したときに,血管が存在するときと存在しないときに発生する後方散乱光強度分布が変化することを示しています.皮膚組織下に吸収体が存在するか否かによって強度分布が大きく変化します.このような強度分布の変化を私たちが提案しているアルゴリズムで数値演算をしますと,吸収体の表面形状が再構成できます.

図2には,集光レーザビームを2次元走査するための半導体共振ミラーが組み込まれた光学系を示します.提案のアルゴリズムでは図1のように得られた強度分布の空間積分をする必要があります.本光学系では,検出開口に同軸バンドルファイバを用いて,ファイババンドル部分で空間積分するとともに,中心の非検出部によって表面からの直接反射光をブロックしています.

図3は,レーザビームの走査と検出された2次元強度分布を示します.光源は,波長0.63ミクロンのHe-Neレーザです.この波長のレーザ光は,血液中のヘモグロビンによって吸収されます.検出された2次元の強度分布に,血管が吸収によって黒い分布として撮像されています.

図4は,図3で検出された2次元強度分布を,私たちが提案しているアルゴリズムに従って再構成した結果です.吸収が存在する領域,この場合は,血管の上面の形状を示します.図5は,血管部の動態イメージングの結果を示します.拍動に応じて,血流の変化が血管の太さの変化に変換されていることが観察されます.

図1 皮膚からの後方拡散光強度分布
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図2 共振ミラーと光学系
図3 ビーム走査と2次元強度分布
図4 再構成された血管分布トポグラフィ像
図5 再構成された血管動態イメージング