メッセージ

皆様へ

2020年6月1日より、東京農工大学の准教授として採用していただきました。

振り返りますと、15年前の学部4年生の時には研究の『ケ』の字も分かっていない未熟で意識も決して高くない学生でしたが、東京大学の加藤隆史先生の研究室に配属させていただき、液晶の研究に触れる機会や学会・論文など研究の世界の面白みを肌で感じる機会も沢山いただきました。更に研究を『適当』にするのではなく『プロ』として進めるための力の磨き方を徹底的に指導いただき、本当に恵まれた研究者人生第一歩だったなと深く感謝しています。ありがとうございます。

直属の上司だった吉尾正史先生(現NIMS)も僕の視野と世界観を一気に広げてくださった存在であり、深く感謝しております。研究室のスタッフや同期や先輩・後輩には、凄く迷惑もかけてたかもしれないし、見えるところでも見えないところでも沢山助けられてばっかりだったなと反省する気持ちと共に改めてありがとうの気持ちがこみ上げます。


2010年には本学の大野弘幸先生と中村暢文先生の研究室に助教として招いていただき、組織をリードする『ボス』としての背中を間近で見せていただきました。この段階では、自分が研究室の主催者(PI)になるなんてことは恐れ多く、自分の中に選択肢としてはありませんでしたが、大野先生・中村先生が『めちゃくちゃ楽しそうに』研究や学生指導している姿を見せてくださり、飛び込むのを躊躇していた世界にダイブする『決意』ができたような気がします。ありがとうございます。

同僚や学生さんたちにも温かく接していただき、若干人見知りもある僕が組織に溶け込むのをサポートしてもらえたなと感謝感謝です。一緒に『液晶班』としてグループで議論しながら研究する日々の中で、『チーム研究』の楽しさがわかった気がします。研究室には、全然違うテーマを進めているメンバーの方が多かったですが、その分、広く多くのことを学べる期間であり、自分の中でも大切な5年間でした。


この辺りの期間から、液晶学会を始めとする様々な学会の同年代の研究者仲間ができて、今までとは違う研究の楽しさと魅力に気づけました。特に、同じ夢を共有できる研究者の存在は、『仲間』であり『心のより所』でした。これからも末永くよろしくお願いします。


2014年からの3年半の『超空間さきがけ』の期間は、本当に『化け物』みたいな研究者たちと沢山出会い、自分の力不足を真に感じました。しかし、一流ではなく、超一流の研究者はここまで辿り着けるのかという『頂きの高さ』を目の当たりにし、研究に対する魅力を改めて痛感する機会になりました。特に、総括を務めてくださっていた黒田一幸先生には、厚い熱い気持ちで叱咤激励いただきました。研究には、『運・鈍・根』が大事だが、世界に『革新』をもたらす研究者まで辿り着くためには、『ここまで突き詰めないといけない』という事に対する『気づき』を得る機会だったなと感謝しております。

 

2015年からは本学のテニュアトラック准教授として、曲がりなりにも『PI』として研究室を持ち、それまで以上に『研究』と『教育』に対して濃く接する機会をいただきました。この期間、苦しいことも沢山ありましたが、同じ『夢』を学生達と共有し、日々議論できたことはとてもとても楽しく、その御蔭で5年間走りきれたなと感謝しております。皆さん、ありがとうございます。また、学科の先生方にも温かくサポートしていただき、改めて良い組織に所属できて幸運だったなと思います。

 

こんなに沢山の方々に支えていただいてきたのだなぁと思うと、この御恩に報いたいなと思っておりますが、『恩返し』ではなく『恩送り』の精神で臨んでいきたいと思います(=現在の研究室メンバーやこれからのメンバーに沢山のことを伝えられるように頑張ります!)自己採点では、『研究者』としても『教育者』としてもまだまだ未熟な点だらけですが、僕が恩師の先生方に頂いたのと同レベルの『チャンス』や『機会』『きっかけ』を、自分の学生にも少しでも多く与えられるようなPIになれるように、これから一生懸命精進したいと思います。温かく見守っていただければ幸いです。

ただし、たった一度きりの人生なので、他人からの評価に傾倒するのではなく、自分が面白いと思った『サイエンス』をとことん追及して、『科楽(カガク)』し続けるという姿勢も大事に頑張りたいと思います。また、『准教授』という大任を拝命したからには、自分の行った研究をしっかり『学術』として形にできるようにも頑張っていきたいです!

 

最後に、生まれてからずっと温かく育ててくれた両親と一緒に育ってきた姉妹、温かく見守りつづけてくれた親戚の皆様に改めて深く深く感謝して、これからも『一川尚広』としての人生を楽しみたいと思います!

 

これからもよろしくお願いします。

 

2020年6月30日   一川尚広