プラスチック製食器等からのノニルフェノールの溶出
環境化学,vol.12, vol.12, p.621-625, 2002より一部改訂
プラスチック製の食器等について、油脂性食品疑似溶媒であるn-ヘプタンを用いた溶出試験を行なった。
50種の製品を
GC-MSで分析した結果から、
16試料で有意にノニルフェノールが溶出し、
そのうち5試料で特に高濃度(21〜2485 ng/cm2)で検出された。
ポリスチレンおよびポリプロピレン製品からの溶出が最も大きかったものの、
検出量には大きな変動が認められ、その変動には明確な傾向は認められなかった。
検出されたノニルフェノールは
トリスノニルフェノールフォスファイト等の添加剤由来と考えられる。
しかし、製品表示には添加剤の成分名は明示されていない。
私たちの調査は西暦1999年に購入したプラスチック製品について行ったものであるが、
最近の東京都の調査でも合成樹脂製器具・容器等からノニルフェノールが検出されている。
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東京都保健局の2004年3月26日のプレスリリース
プラスチック由来のノニルフェノールから消費者の身を守るために以下の施策等が必要であろう。
・プラスチック製食器等に添加剤の成分名を表示して
消費者がノニルフェノールが含まれる製品を判別できるようにする。
・添加剤の表示ができないのならば、トリスノニルフェノールフォスファイト等、
ノニルフェノール系の添加剤を食器等直接食品や飲み物と触れるものに
配合することを禁止するような行政的な措置をとる。
残念ながら現状では上記は行われていない。
そのような現状のもとでは私たち消費者は予防原則に基づき、
食器等直接食品や飲み物と触れる用途にプラスチック製品を
使わないようにすることが賢明であろう。
特に、油の多い食品やアルコール濃度の高い飲み物を入れる容器の場合は
プラスチックをさけるべきであろう。
また、溶け出す量が多くなるのでプラスチック食器等を暖めることもさける方がよいだろう。
文責:国立大学法人 東京農工大学大学院 教授 高田秀重
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磯部ら(環境化学,vol.12, vol.12, p.621-625, 2002)の本文
図1:ノニルフェノールのクロマトグラム
図2:プラスチック製食器等から溶出するノニルフェノール量
図3:ノニルフェノール系添加剤の構造式
表1:GC-MSの運転条件
表2:プラスチック製食器等から溶出するノニルフェノール量
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